コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第309回 長沢蘆雪の「なめくじ」

昨日は、府中市美術館
「三都画家くらべ  京、大坂をみて江戸を知る」
というのを観て来ました。

江戸時代の中、後期に描かれた
絵の展覧会で、
羽や毛並みが超リアルな鶴や虎や猿や
孔雀の絵があったりする中で、
長沢蘆雪(1754〜1799)の「なめくじ」が
いちばん痛快だったですねえ。

一匹のなめくじがいて、
そのなめくじが這った跡が
グニャグニャッと描かれただけの絵で、
「手抜き」にも思える絵なんだけど、
展示画の中でおそらくあのなめくじの絵が
最も描くのが難しい。

リアルな絵は、本物みたいに描けばいい
という点でも簡単だし、
羽や毛をひとつひとつ一本一本根気よく
手を抜かずに描けばいいという点でも、
それはそれで誰にでもできることじゃないとはいえ、
描き込むほうが実は簡単だったりする。

手抜きって、どの部分の手を抜くか、考えて
自分で決めなくちゃいけないのが難しいのよね。
全部描く、っていうのは、ある意味、
どこを省略すればいいかわかんない人の使う手、
というか、本人はそれしかできないわけで、
手を抜けない人は手抜きできる人を
ものすっごく憎らしいだろうねえ。

本物の人間どおりの頭身で
リアルな人間を描ける人が
三等身や四等身の漫画絵の人間を
描くことができなかったりする。
という事実を本人はわかっていたりするんだけど、
絵を描けない人にはリアルな絵のほうが
うまい絵に見えたりするんだよね。

「三都画家くらべ  京、大坂をみて江戸を知る」、
時代が進むにつれて、細く繊細だった線が
太くおおざっぱになっていくのも
面白いなあと思った。
一見ただの下手くそな絵に見えるんだけど、
進化して手抜きできるようになったわけね。

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