コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第84回 Gジャンってオシャレなの?

私と鈴木さんはものすごく趣味が違う。たとえば、鈴木さんは、「この間、見かけた人が、ジャケットとパンツのツーピースで、どっちも脇におそろいのリボンがこう縫いつけてあって、刺しゅうかなんかあるかわいいリボンなんですけどね、あら、シャレてるわあと思って」と言って私に「そうですかあ」と言わせたり、鈴木さんいわく「アリスの時計みたいな」ゴールド色の文字盤の時計模様の直径30ミリくらいのボタンや、シルバーっぽい土台にバラの模様が彫られた直径25ミリくらいのボタンを「かわいいでしょ」と見せてくれたりしながら「洋服は最後のボタンでキマると思うんですよ」と言い「でも、こういうボタンをつけたら最後の最後で洋服が台無しになると思いますよ」と私に言わせ「この間、刺しゅう教室のお友達が欲しいって言うんで分けてあげて」と言って「そういう人はこういうボタンを何に使うんですか?」と私に質問させ「ポーチの、こうボタンを止めたりするのに」と答えて私に「そうでしょう、そういう小物に使うボタンですよね」と言わせたりするくらい趣味が違う。

そういう鈴木さんがいつ、脇にリボンの縫いつけられたジャケットやパンツを着て来るのか、いつ、時計模様のボタンのジャケットを着て来るのかと待ち構えているのだが、鈴木さんはいつもわりとシンプルな私好みの格好で、チョコレート色のハイゲージのシンプルなノースリーブ・ニットに、シルバー色の3連ビーズのシンプルなラリエットをしてきたりする。鈴木さんと私はすごく趣味が違うのだが、鈴木さんを私はなぜか「オシャレだ」と思っている。

そんな鈴木さんに、インディゴブルーのデニムがあるのだが何を作ったらよいかと聞かれた。私は「Gジャンとか、どうですか」と言った。鈴木さんは「私、そんなオシャレじゃないんで」と答えた。

Gジャンというのは正確にはGジャンじゃないのだけれど、今は亡き、『おしゃれ工房』2001年3月号で私がデザイン製作解説したGジャン風ジャケット(クレヤン増刊2号8P掲載)のことだ。このジャケットは、やや手間がかかるが、技術的にはそれほどむずかしくない。手芸部ではわりと人気のあるアイテムだ。うまく出来上がるとなかなか「手作り」には見えない。

鈴木さんに言われて考えた。Gジャンってオシャレな服なのか。私はGジャンをあんまりオシャレじゃない服だと思っていた。どっちかというとダサい服で、だからわりと気軽に着られて好きだ。っつうかむしろ、Gジャンをオシャレしているつもりで着るのってダサいと思う。

で、鈴木さんの「シャレてる」を思い出した。脇におそろいのリボンが縫いつけられたジャケットとパンツ。確かにあれを「シャレてる」と言うほうが正しいし、時計模様のボタンのジャケットも「シャレてる」でいいのだ。でも、私はそういう服を「オシャレだ」と感じない。ということは、やっぱり私と鈴木さんの趣味はものすごく違う。で、いいんだよね。いや、同じ趣味なのか?