コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第102回 映画『新宿残酷物語』

用事があって新宿へ行って来ました。
日傘を売ってる店の前を通ったらお客さんがワラワラいて、
私も普段は帽子派なんですが、
こう蒸し暑いと日傘ですかね、やっぱり。

アッツいと言えば、先週クレヤン編集部の映画鑑賞会で
『新宿残酷物語』(1961/大島渚監督)を観ました。
映画の中の季節も夏で、ストーリーはザンコクだし、
大島渚28歳のときの映画だし、で、アッツい映画です。

『新宿残酷物語』の衣装は森英恵さんです。
朝日新聞夕刊で森英恵さんの連載インタビューがはじまりましたが、
今日の内容はほんとど
『ファッションー蝶は国境をこえるー』(森英恵著/岩波新書)に
載ってることですね。
本は第二章「修業、映画、そして色」のあたりがすごくおもしろいです。

森英恵さんは60年ころの映画の衣装を
多く担当していますが、どの映画のもある意味、
ザンコクな衣装です。
衣装は映画の中で浮いてます。
とても着たくないような洋服ばっかりです。
今日のインタビューでも答えてらっしゃいましたが、
確信犯だったのですね。
目立たなくては成功できない。
生きるとはかくもザンコクなことなのね、なあんて(笑。

イラストに書いたブルーのスカートはいちばんマシなやつです。
ほかは、
黒、グレー、白のティアードスカートとか、
濁ったグレー、濁ったグリーン、濁ったピンクの
幅広ストライプのワンピースとか、
朱赤の地にデッカイ水玉(縁がギザギザの水玉!)のワンピースとか、
リアリズムをまったく無視した洋服だらけで、
あの独創的なデザインには感服せざるをえません。

『新宿残酷物語』の主人公の女性のほう、
桑野みゆきという女優さんは、
うちの編集長(1955年生まれ)に言わせると
かなり男性に人気のあった女優さんらしいです。
私は、戦前の人気女優、桑野通子の遺児であること以外は
知りませんでした。

桑野通子さんについては、
クレヤン9号「中野翠に訊け!」で中野さんが触れています。
ホント、戦前に活躍した人とは思えないような
現代的な容貌の女優さんです。

みゆきさんはパパ似なのか、
ちょっとしたブスというか、よくいるブスというか、
そんな感じなんです。

その上、演技が自然体というのか、上手じゃないというか、
たぶん下手なのかなあと思うんですが、
微妙な表情とかがヘンなんです。
わざとかもしれないけど。

だからイラストに書いたアップのシーン、
ものすごくいけないものを見てしまったみたいなアップなんです。
特に、眉がヘン。
間違えて描いたのか、描いてた途中なのか、
朝帰りできちんとできなかったというのを表現しているのか、
ブスなんです。

それから、川津祐介は、
家庭教師してる子の母親と不倫してます。
その母親の肉体がむちゃくちゃリアルでザンコクです。
自分が若いときなら笑ってすませた、
もしくは、ぜんぜん気にならなかったかもしれないんだけど、
47歳の今は超気になる! どういうことだ。

今の映画ならたぶん黒木瞳あたりがやるんじゃないか
と思われるような役なんだけど、
近所のスーパーでスカウトしてきちゃったみたいな。
あの女優さん、
読売テレビの偉い人の奥さんでちゃんとした女優さんなんですが、
確かに着物を着ているときは上品。
でも、脱ぐとザンコク。