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「クレヤン編集長日記」
2010年12月分に目を通す。

この時期に読んだ本で
強烈な印象が残っているのは、
小林信彦『夢の砦』（新潮社）。

雑誌編集者という仕事の魔力、
そしてその虚しさが描かれている。
『夢の砦』は
雑誌編集者小説の傑作である。

※
午後、まだ若い
敏腕単行本編集者が来訪。

3.11以降、仕事上なにか
顕著な変化はある？　
という僕の質問に、
僕らのやってきたことは
なんだったんだろう
という感じはありますね、
と彼。

彼の言う
「僕らのやってきたこと」とは、
たとえば本のデザインに
対するこだわりである。

以前だったら、
この企画なら◯◯さんに
デザインを依頼したい
というのがあったが、
そいうこだわりが3.11以降、
特に薄れてきたという。

彼本人にはこだわりがあっても、
業界の風潮が
そういうこだわりを
無化してしまう状況らしい。

早い話、
本が売れる売れないに
デザインは関係ないということ。

僕の経験から言っても、
有能で経営にシビアな出版人ほど
「デザインで売れた本はない」
的な発言をする。

じゃあ、ツルシカズヒコは
どう思うのかと問われれば、
僕もデザインは二の次で、
売れることに重きを置きたい
と思うようになった。
困ったもんである。

デザインというものが、
軽視されるならば、
そもそも
雑誌を創る意味などない
ということにもなる。

今の『週刊SPA!』を見て、
まずうんざりするのは、
あのデザインだ。

だからといって、
デザインを良くして
売れるというものでもないだろう。
困ったもんである。

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