コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第250回 人生には思い通りにいかないことがある

日経新聞朝刊の広告面に
「古都に学ぶ じぶん流奈良の楽しみ方」
という記事がありました。

日経新聞を知らない人に
私なりに日経新聞を説明するとしたら、
あれを読んでいると、
日本中のすべての女性が
バリバリ働く母親であるかのように
思えてくる。そういう新聞です。

そんな日経新聞の、
奈良へ旅しましょう的広告面に、
奈良国立博物館学芸部長・西山厚氏と
タレントの小島慶子さんの
対談記事が掲載されていました。
一部抜粋。

N 出産などを通じ、
肉体がもつ意味が男とは異なる。
そういう女性特有の身体性や感性が
信仰を深めるのではないでしょうか。
K 私は、人生は努力や知力でどうにかなる
と思っていましたが、
出産や病気を経験して以来、
体は考えとは無関係に進行し、
ほとんどの物事は思い通りにならない
と実感しました。
すると何事も受入れられるようになる。
だから仏さまにも向き合うように
なるのでしょうね。

やりとりの次に入る小見出しは、
「女性の慈愛に満ちた空気が
安らぎをもたらす奈良」。

オンナを仏さまに匹敵するくらい
慈愛に満ちた素晴らしい生き物かのように
ヨイショしまくる内容が気持ち悪い。
そして、小島慶子さんの発言……。

出産や病気によって
人生には思い通りにいかないことがある、
と知る女性って多いの?

出産や病気以外の別なことでも、
いや、もっと小さなことでも、
人生が思い通りにならないことを知る機会は
山ほどあるんじゃないの?

昨年、3月に
『裁縫女子』(リトルモア)の取材を受けて、
「裁縫の魅力は、物事が思い通りに
いかないことが実感できること」
と答えたことを思い出したわけですが、
なんかかぶる発言でひっかかった。

ていうか、
私がひっかかったのは、
自分が子どもを生んでないからでしょうね。

出産を経験してない女性は、
女性として苦労知らず的な、
いや、人間として苦労知らず的な、
いや、愛の心のない人的な、
いい方されてるように感じるんだよね。
被害妄想ですかね。

だってさあ、この広告面てば、
「愛の心のない人には仏教はわからない」
なんつう小見出しもあるんだよ。
子どもを亡くした貴人が
我が子を思って仏像を作らせた
とかって話のあとに。
バリバリ生む性である女性万歳!的広告
と私は読んださ。
まるで再び生めよ増やせよ戦争ゴー、
みたいじゃないすか。

いや、子ども生んでないことを
欠陥商品呼ばわりされるのは
納得いくですよ。
で、欠陥商品でも存在は許される。

この記事を読んでて
年始のラジオも思い出しちゃった。
元モデルでマラソンが趣味とかいう女性が、
新年の豊富を話してた回なんだけど、
いちばん大事なことは健康だって繰り返す。

健康がいちばん大事ですよね、
健康ですよ、
健康でありさえすれば、
ほかはなんにもいらない、
みなさん、そうでしょう、
みたいなことをいってたのよ。

健康ファシズムと命名してやろう
と思ったくらい、
なんかヤだったなあ。

私は、
「できなくてもいい」は、ありだと思っていて、
「なくてもいい」もありだし、
「イイヒトでなくてもいい」もありだし、
健康でないのもありだと思う。

歌人の枡野浩一さんが有料メルマガに
別の文脈で書いてた一部の
真似になっちゃうけど、

私は、この世には
「ダメなものでも存在していい」
と考えています。

女性は子どもを生む動物、
だから慈愛に満ちてる、
みたいないいかたって、
ダメなものはこの世に存在してちゃいけない、
と同じ文脈に私には聞こえる。

*********************
  
●ワタナベ・コウの漫画単行本第2弾
『節電女子』発売中!

(発行:日本文芸社
 企画:エム・エム・クリエーション
 編集協力:ツルシカズヒコ

*********************

『裁縫女子』(リトルモア)のインタビューなど】

雑誌『hito(ヒト)』3号

「サイゾーウーマン」

●歌人の枡野浩一さんとのユースト対談↓
http://www.ustream.tv/recorded/12750111

●写真家の大野純一さんとのユースト対談↓
http://www.ustream.tv/channel/ohnojunichi

●文筆家の近代ナリコさんの『裁縫女子』(リトルモア)書評↓
http://bit.ly/fHvj35

●『裁縫女子』は↓で最初の4ページが読めます(無料)。
http://xfs.jp/yVaxt

●YouTube 「クレヤン放送局」は↓
http://www.youtube.com/user/watanabe3kou