コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます
第481回 「母性」って、なんかヤじゃない
スカパー!の日本映画専門チャンネルで、
広末涼子主演の映画『桜、ふたたびの加奈子』
とかってやつの宣伝番組が流れてたんだけど。
女性に見てほしい映画だとか、
主要モチーフが母性だとか、
母と子だとか、
散ってしまうから
咲いてるときが美しい桜は素敵だ、
桜もモチーフなんです、とか、
ゾワゾワする単語を
これでもか、これでもか、ええい、これでもか
って感じで垂れ流しまくり、
猛烈気持ち悪くなった。
特に嫌いなのが「母性」って単語。
「母性」って、なんかヤじゃない。
大震災が起きて以降、
母性とか母と子とかって単語が
ものすごくあふれてない?
アタシの気のせい?
子なし50オンナの被害妄想?
母性はねえ、
嫌いな言葉です、ほんと。
オンナの価値を「そこ」に
落とし込めてる匂いがするから。
まあつまり良妻賢母ってやつだな。
母性とか母と子って単語が
大震災以降に露出増大してるとしたら、
たぶん、
命の大切さみたいなもんを訴えたい思惑が
発動されてるんだと思うんだけど、
と同時に、
インドで多発してるらしいレイプ事件の
原因と言われる、
「女性の社会進出に対する男性の不満」
を腹に抱えるオヤジ社会の、
子どもが生めるのは女性だけなんだから、
とオンナ持ち上げてるように見せて実は、
オンナひっこんでろ的本音を感じるのは、
アタシの気のせい?
子なし50オンナの被害妄想?
母性ってやつはさ、
私もちょっと前までは、そういうものが
生まれながらに女性に存在するんだ
と思ってたわよ。
ええ、ええ、バカでした。
母性って、おおざっぱに言うと、
子どもをかわいいと感じる習性のことだよね。
だから、女性は全員子どもが好きなはずだ
ってなるんだと思うんだけど、
これ、間違った思い込みだと思う。
知人に、
子どもがあんまり好きじゃないって
Aさんて女性がいてね。
既婚者で、ダンナさんも知ってる。
ごく平均的な会社員であるふたりは、
ごく平均的な年齢で結婚をしたんだけど、
子どもがいない。
あるとき、彼女が
「コウさんは子どものこと聞かないからラクだ」
みたいなことを言って、
へえそういうもんかと思ったんだけど、
そしたら「実は子どもが好きじゃない」
って話をはじめて、
それで子どもを作らないんだけど、
子どもの質問されるとそう答えられないので
すごく困る、って言うのよ。
そのときの自分の反応、
今思い出してもゾオッとするんだけど、
「優しい性格なのに子どもが嫌いだなんて
意外だなあ」だったのよね。
子どもが好きイコール優しい、
子どもが嫌いイコール優しくない、
って思い込んでた自分に愕然とした。
しかし、すぐに立ち直り、
そうだよなあ、いろんな人がいるよなあと思い、
自分の内なる偏見をまたひとつ
捨てることができたのでした。
で、それからしばらくたったある日のこと、
未婚で同世代のBさんと話してて、
Bさんが「結婚して子どものいない人は
すべて子どもができない人だ」
みたいなことを言ったのよ。
いや、それはかなり偏見では、と思い、
「子どもが好きじゃなくて作らない人もいるんじゃ」
と言ってみた。
そしたら、Bさんは、
表向きそう言うだけで、
そういうウソついて隠したいくらい
女性にとって子どもができないのは
辛いことなんだ、って言うわけ。
あっ、もしかして、
Aさんもそうだったのかなと一瞬、思った。
けど、すぐに、Aさんの場合、
「子どもが好きじゃない」は真実だ、
と確信した。
なぜなら、聞き手の私に
見栄はる理由が見つからないから。
私は2度流産して、
奇形子宮で赤ちゃんが育ちにくいらしく、
治療しますかとか医者に言われたけど
めんどくさいし、別にいいや
ってことにした人間なんだけど、
その話はAさんにしてる。
というか、この話、
いろんなとこでしたり描いたりしてる。
この話聞いた相手が
流産経験者や不妊治療者の場合、
いや、既婚で子どものいる女性の場合でも、
ほぼ100%、
「コウさん、大丈夫ですよ、
勇気持って、必ず生めますよ」って
なぜか励まされるか、
「実は私も治療中なんです」って
なぜか告白される
(いや、だから私は、治療してないって)。
「辛かったでしょう、
いま口にするのもお辛いでしょう、
もうそれ以上話さないで」って、
言われて、ボーゼンとしたこともある。
あ、もしかして、通じてないかな。
つまり、そう言われても、私、
ちっとも辛くないわけですよ。
そんな一大事じゃないから、
私にとって、子どもできないことは。
けど、「世間」は、
子どもができないオンナはものすごく苦しんでる、
って思い込んでるってことを思いっきり知った。
不妊治療とかしてる人が子どものいないことを
辛く感じてることはまあ理解できるとして、
けど、未婚で子どものいない女性も
そういう思い込みを共有できるって事実には、
なんかすごく驚いた。
この思い込みを
こんなにもメジャーな感情として
認知させられる仕組みを知りたいなあ
と強く思った。
その研究成果は一部、
『裁縫女子』(リトルモア)に
結実してるけどね。
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