コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第175回 嫉妬心を自覚出来れば作家になれる

『裁縫女子』版元の社長あてに無署名の投書がありました。
編集担当者ではなく、社長あてに、ってとこが、
「プロ」みたいですね。

投書の出だしは、

そちらで本を出版している「ワタナベ・コウ」さんですが、
メール無断転載の常習犯です。

前略も拝啓も○さま、とかもいっさいなく、
いきなりこれではじまります。
まるで、いろんなところに送りつけるつもりみたい。

私の昔のブログから、
当人書くところの「メールの無断転載の該当箇所」の
大量のコピーも同封されています。

ほんと、わりと大量なんだけど、
それを切手代を払って送りつけてるからお金持ちなのかな。
私なら切手代、もったいないと思っちゃう。
というか、私、愛されてるんですね。

それから、
そのコピーがところどころ切り離してあるんだけど、
断面がカッターで切ったのじゃなくて、
ものさしかなんかでペリリって切ったような
ギザギザの断面なの。

カッターなら複数枚ごとにいちどに切れるでしょ。
ものさし方式だと一枚ずつしか切ることができない。
こんなめんどくさい作業をやるってことは、
印つけやしつけもめんどくさがらずやる人なのかなあ。

いや、それでですね、
私は、投書が来てコワかった、
ってことを言いたいんじゃないんです。

この投書を引き合いに、
自分の裁縫術のすばらしさを再認識したことを
お伝えしたかったのです。
ジャジャ〜ン。

投書をくれた人が指摘している
「メール無断転載」ですが、
メールも創作物のひとつとみなし、
送信者に著作権がある、
という「考え方」もあるようですが、
私は、必ずしもそうではないと解釈しています。
内容によると思う。

万が一、著作権違反にあたるとしても、
法律は万能ではありません。
解釈の違いというやつもあるし、
いや、というか、私は、
法律違反を絶対的悪だと考えてなくて、
違反を犯しても主張したいことはこの世に存在する、
と思っています。

法律に違反しないことを第一義に置いて生きる人より
違反してでも言いたいことがある人のほうが私は好き。
自分もそのくらいの主張や思想を持つ人間になりたい。

とはいえ、私あてに来たメールの転載は
著作権違反だとは解釈していませんけどね。

で、投書の主が繰り返す「メール無断転載」、
私がNHK「おしゃれ工房」に出演しているころに
2chとかでさんざんやられてたことなんだけど
(つまりかなり昔からのファンてことね)、

当時からイヤだなと思ってたのは、
著作権違法とかを持ち出して、
法律に違反しているからよくない、っていう言い方。

ワタナベ・コウが大嫌いでしようがない、
とにかく悪口を言いたい、ならわかる。

投書の最後は、
出版社さまがワタナベ・コウの著作権違反行為で
被害にあわれたら大変なので投書しました、
というような内容で締めてあるんだけど、

ワタナベ・コウは法律に違反している、
だからみんなで糾弾しようとか、
だからそちらにも被害がおよびますよ、
という正義感はよくわからない。
というか、ある意味、よくわかるんだけど。

で、私の裁縫術は自己流なんですね。
家庭科や裁縫の専門学校なんかで教わる方法とは違って、
印つけとしつけをしません
(ほかにも細かい違いがあるけどここでは省く)。

印つけとしつけをしない裁縫術って、
短時間で出来るのもいいんだけど、
最大の魅力は、自由度!
印つけやしつけをしなければ、
極端な話、どこを縫っても自由だからね。

印をつけて縫うと、
印の上を一生懸命はずさずに縫おうとします。
しつけをして縫うと、
しつけを一生懸命きれいにしようとしたりします。

印つけもしつけも、
本縫いをラクに行ない、
服を完成させるための準備でしかないのに、
その準備をきっちりやることに力を注ぐ。
服を完成させることが目的のはずなのに、
木を見て森を見ず、になってしまう。

印つけやしつけをする裁縫術は、
本当に大事なことは何か、
根本的な解決法は何なのか、
を考えさせない縫い方なんですよ。

私は、
自分で自分の服を自己流で作りたかったので、
学校で教わった方法がめんどくさくて、
印つけやしつけを省略する方法が性に合った。

自分がよければ、
多少ズレてても曲がってても、
着る分には支障がないこともわかったし、
自分の判断でよしとして、
自分の責任で
少々出来の悪い服を着こなしているわけです
(ちょっと謙遜してみた)。

印つけやしつけをする裁縫術は、
本来クリエイティブで自由度が高い服作りという行為を、
とても窮屈な行為にしてるし、

自分で全体像を理解したり、
自分でいいか悪いかを判断出来なくさせてる
ような気がするんです。

そういう不自由な裁縫術のほうが
自由な裁縫術よりもラクだと感じる習性は、
自分に不愉快なことを法律違反だと糾弾する習性と
似ているような気もします。

私の自己流の裁縫術に対して、
裁縫の得意な人たちからよく、
「正しくない」と批判されるんだけど、
あれって、
法律違反だと主張する物言いに似ている。

自分は法律に違反しないように生きてきた。
たぶんそれは窮屈なものだったんでしょう。
窮屈な思いをしないで生きてる奴を
嫉妬する気持ちはわかる。

嫉妬心を自覚できれば作家になれる、
と言ったのは誰だっけ。
嫉妬心を自覚出来る人なんてそういないけど、
嫉妬自体は悪いことじゃない。

投書くれた名無しのごんべさん、
今はただ卑怯なだけのキミも、
嫉妬心を自覚すれば作家になれるゾ!
(ポパイもしくはHDP風のつもり)

 
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(発行:日本文芸社
 企画:エム・エム・クリエーション
 編集協力:ツルシカズヒコ
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ココログ「服を買わない生活」から。

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【『裁縫女子』(リトルモア)のインタビューなど】

雑誌『hito(ヒト)』3号

「サイゾーウーマン」

●歌人の枡野浩一さんとのユースト対談↓
http://www.ustream.tv/recorded/12750111

●写真家の大野純一さんとのユースト対談↓
http://www.ustream.tv/channel/ohnojunichi

●文筆家の近代ナリコさんの『裁縫女子』(リトルモア)書評↓
http://bit.ly/fHvj35

●『裁縫女子』は↓で最初の4ページが読めます(無料)。
http://xfs.jp/yVaxt

●YouTube 「クレヤン放送局」は↓
http://www.youtube.com/user/watanabe3kou