伊藤野枝原作「動揺」を
ワタナベ・コウが漫画にしました。
伊藤野枝(1895-1923)は
1970年代ごろから注目され始めた、
日本のフェミニズム運動の先覚者だと
いわれています。
28年8ヶ月の短い生涯でしたが、
ダダイスト辻潤、
アナキスト大杉栄との間に
7人の子供を生み、
『青鞜』の2代目編集長を務め、
『中央公論』『婦人公論』『改造』などに
寄稿する若きスーパーウーマンでした。
「動揺」は1913(大正2)年初夏に起きた、
木村荘太と野枝のラブアフェアについて、
野枝が書いたルポルタージュです。
辻潤という夫があり
妊娠中でもあった野枝ですが、
小説家志望の荘太のラブレター攻撃に、
野枝の心は動揺しました。
野枝が苦悶を「あるがまま」に
吐き出すように書いた「動揺」は、
『青鞜』に掲載されて評判になり、
野枝は物書きとして注目される存在に
なりました。
ワタナベ・コウがカラーで描く、
大正時代の築地、
銀座、神楽坂、染井、日本橋などの街並み、
街を闊歩する物売りたちの姿、
まだ緑が多く残る東京の初夏を
彩る木々や花々や生き物たちの、
なんと生き生きしていることか!
自身、着物を自作する
ワタナベ・コウが描く、
着物へのこだわり、
その色彩感覚にも注目したい。
さらに昨今、再評価の声が高い
明治の画家・小林清親も登場、
原作「動揺」にはない
このあたりのシーンも楽しめます。
巻末、ツルシカズヒコ●文による
「伊藤野枝『動揺』について」の
一考察も読ませる。
荘太はこの一件から37年後に
自伝を上梓し、
わずか2週間ほどの間の
出来ごとだった「動揺」に
言及していますが、
自伝発刊直前の自死はなぜ……?。
CY大正浪漫コミックス 第1弾です。
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漫画 ワタナベ・コウ
原案 ツルシカズヒコ「伊藤野枝1895-1923」