コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第1058回 伊藤野枝とドンゴロスと米騒動




コウ手芸部に初参加したSさんから、
30代ママたちのSNS事情および
メッセージアプリ関連の話を
聞きました。

誰でも読めるココでは、
詳しく書けないんであれなんだけど、
まあ、ともかく、改めて、
ストレスフルな社会なんだなあというか、
オープンなはずのメディアを
クローズに使わなきゃいけないほど、
「壁」がものすごっ高くなってるんだなあと。

自分ひとりの身を守るのが最優先の時代
なんすねええ、はあああ。

いや、別に、今さらじゃないか。

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女性史家・村上信彦が、
日本人女性の衣服がなぜ着物だったのかを
徹底追及した本の中で、
男女ともズボン(袴)を着用していたのが
男女別の服装になって定着するのに
約900年かかった話を書いてて。

風俗を含む社会の変革には、
長い長い時間がかかるというわけで、
個人の意見とか、個人の好き嫌いだと
思われていることがそうじゃないと。

社会のほうが変わらないうちは、
真の個人の意見などありえない、
みたいな話でもあって。

簡単に要約できる内容じゃないんだけど、
ともかく、村上氏は、
状況が変わるのは900年後かもしれない、
けれど「仕方ない」ですますな、
女性白痴化政策に屈するな、
女性だって考える力は持てる、
と言いたくて服装史を書いたんだ、
と私は理解しています。

さて、
ツルシカズヒコ氏が執筆中の
『伊藤野枝1895-1923』の絵を描くために、
大正時代を勉強中であります。

前出の村上信彦氏は、
当時の人気作家、村上浪六の息子で、
伊藤野枝が女学校時代に住んでいた家の
隣りで生まれた人でもある。

拙著『裁縫女子』では、
伊藤野枝が書いた以下の文章を引用しました。

〈日本婦人の頭は呆れるほどばかです。
洋服の講習会がある。といっても、
ここでも根本原理そっちのけで、
その会で一枚の洋服を縫いあげさえすればいい
という方が多いようです。

頭を働かさないように、
頭に骨の折れないようにというふうにばかり
教えられ、教わろうとするのです。

で、何もかも、すこしも
本当の自分のものにはならないのです〉

良妻賢母という規範に反して
生きようとした野枝が、
良妻賢母の象徴でもある「裁縫」を、
実はクリエイティブなものなんじゃないか、
と考えていたのかもと思わせるこの文章、
私はかなり好きです。

そんな野枝が、
南京米の麻袋をリフォームした手提げ袋を
愛用していたことは、
ツルシ氏の『伊藤野枝1895-1923』
はじめて知ったわ。

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南京米(なんきんまい)とは、
いわゆる外米(がいまい)、
非日本産のインディカ種米のこと。

米は明治時代から輸入されていて、
貧乏だった野枝たちは、
安価な南京米を食べていたようです。

麻布の手提げ袋は、
『竹久夢二 大正モダン・デザインブック』にも
1915(大正4)年に創刊された雑誌『新少女』の
手作りのアイデアとして紹介されていたりもします。

リネン族との関連を書きたくなりますが、
それはまた改めて。

で、南京米の麻袋ことドンゴロスですが
(ドンゴロスの語源は、
ヒンディー語のダンガリー)、
コーヒー豆の麻袋は今でも見かけるので
わかるんですが、
大正時代の南京米の麻袋の画像が見たい!

と思って、検索してみたんだけど、
ヒットしませんでした(泣。

かわりに、検索の過程で、
こういうブログ↓を読んだ。

●100年前と20年前の「米騒動」
ー『ひえたろう』編集長の日記

20年前の「米騒動」というのは、
1993(平成5)年、冷夏による米不足だかで、
タイ米が輸入されたときの騒動のこと。

当時の「米騒動」を扱った漫画、
『美味しんぼ』と『ゴーマニズム宣言』が
引用されていて、おっ、と思いました。

『美味しんぼ』は、
インディカ米を美味しく食べる方法を掲載。

『ゴーマニズム宣言』は、
「日本人なら日本米!」と
ゴーマンをかましています。

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『ゴーマニズム宣言』は、
みなさんご存知のように(笑、
1993年当時、週刊スパ!の編集長だった
ツルシカズヒコ氏の企画で連載がスタートした
人気漫画です。

某漫画家があるインタビューで語った
「漫画とはギャグ漫画である」は、
漫画とは何かを端的に語ったセリフとして
私は記憶し、かつ同意しているんですが、
そういう意味で、
1993年の米騒動を描いたふたつの漫画、
どちらが「面白い漫画」か、と言ったら、
答えは明白。

国家が主導する
(おいしくない)輸入米を
(我慢して)食べましょう
(食べない人は非国民)政策を皮肉る
「日本人なら日本米!」は、
なんて面白いギャグ漫画なのでせう。

しかし、はたして、22年経った今、
「日本人なら日本米!」を
ギャグとして読める人が
どれだけいるんでしょうか。

いや、当時だって、何人が
ギャグとして面白がったのか。

漫画の悲劇は、
わかりやすいという最大の利点が、
最大の欠点でもあることだと思う。

うまく書けないけど、
最初の話と最後の話は、
つながってる話のつもり。

人間の目っつうのは、
「見たいものしか見えない」らしいけど、
見えなかったものが見えるようになったときって、
むちゃくちゃ楽しいけどなあ。

上記ブログで紹介されてた
『お米と食の近代史』↓は面白そう。

上記本の関連本として出てきた
『日本の米ー環境と文化はかく作られた』↓は、
レビューがスゴいっすね。
富山学、はじめて知った。

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