コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます
第27回 日本婦人の頭は呆れるほどばかです
クレヤン11号は、伊藤野枝を中心に特集を組みました。
伊藤野枝は明治28年生まれ。
雑誌『青鞜』の最後の編集長だった女性で、
28歳で夫の大杉栄とともに
憲兵隊に虐殺された女性解放運動家です。
彼女の主義主張は、おおざっぱに言って、
「自分の頭で考えて行動しよう」だと私は理解しました。
当時の時代背景を考えると、当時の「みんな」は戦争賛成。
「自分の頭で考えて行動しよう」ってことは、
要するに戦争反対を唱えていたわけです。
伊藤野枝は多くの文章を残しています。
私が最も興味を持ったというか、共感できたというか、
えっ、私が書いたみたい!と思ったのは、
「日本婦人の頭は呆れるほどばかです」という文章です。
ミシンや洋裁教室の話にからめて、
根本を知ろうとしないで縫っているからバカだ、
というようなことを書いています。
100年近く前に書かれた文章なんですよ。
ソーイング教室での私の説明は、
よく「わかりやすい」と言われますが、
なぜわかりやすいかを説明してくれた人はいないので、
自分で説明しますと、
根本を教えようとしているからわかりやすいんだろうと思います。
「自分の頭で考え自分の手で会得した技術だから」
と言ってもいいかもしれません。
たとえば、裾を2センチ幅で縫う、とかだったら、
2センチで縫うことが大事なのではなく、
同じ間隔の幅で縫うことが大事なのです。
同じ間隔の幅で縫うことがなぜ大事なのかといえば、
同じ間隔の幅で縫えていればきれいに縫えているように見えます。
作り方どおり2センチで縫わなきゃいけないと思う人はたぶんバカで、
なぜ2センチなのか疑問に思う人は戦争に反対できる人かもしれません。
ずうっと前に、私の教室に来た人が、どっか別の教室で
「洋裁は、失敗をいかに失敗に見せずに仕上げるかが大事」
と先生に言われたと話してくれました。
私以外にも、そういう根本的なことを教えてくれる先生は
いるんだと思いますが、先生がそのつもりでも、
生徒に通じなくては意味がありませんね。