コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第29回 『貝のうた』

昨日、下北沢の、タウンホールの前にある古本屋で
『貝のうた』(沢村貞子著 新潮文庫)を買いました。
沢村さんの本は『わたしの浅草』を読んだことがあります。
わりと好みの感じだったんで、
治安維持法で逮捕収監された話が詳しく書いてある『貝のうた』を
読みたいと思っていたんだけど、偶然見つけたんで買いました。

今、読んでる
『三文役者あなあきい伝 PART2』(殿山泰司 ちくま文庫)も
そうなんだけど、エッセイを書いている俳優さんって、
みなさん文章が上手いですよね。
上手い、が適切かどうかわからないけど、
その人らしい独自の文体ができていて、内容もわかりやすい。
おもしろいドキュメンタリー映画みたいなの。
独自の文体だから、1冊読むと、その人の世界に入り込んじゃって、
ほかの著作も読みたくなったり、著者のことがもっと知りたくなる。

『三文役者あなあきい伝 PART2』を読み始めたら、
殿山泰司を主人公にした映画『三文役者』を観たくなって、
昨日はそれを観たわけですが、
『貝のうた』を読み始めたら、
沢村貞子さんのことがもっと知りたくなって、
『貝のうた』以降の沢村さんの人生が知れる
『老いの道づれ 二人で歩いた五十年』(沢村貞子著 岩波書店)を
図書館で借りてきました。

本や映画は読んだり観ているときも楽しいんだけど、
自分が感動した部分とか歴史的背景とか疑問に感じた部分とかを
ポチと話しまくるときはもっと楽しい。
まあ、ポチだけじゃないんだけど、
話がいちばん盛り上がるのはポチなんですね、私の場合。

今、仕事している人にも本と映画の好きな、
というか、話のわりと合う人がいて、
3年くらい前からその人とは仕事をしているんだけど、
去年ふとした拍子にある映画の話で盛り上がって
それまではほとんど仕事上のあたりさわりない話しか
しなかったんだけど、
それをきっかけに仕事で会うたびに本や映画の話で盛り上がり、
わりといっしょに仕事をするのが楽しみになりました。

本や映画のおもしろさって、
ひとりで完結している部分によりも、
この、しゃべりくりあう楽しさのほうにあるんじゃないのかなあ。

でも、本や映画の話って、
というか、特に本のほうか、
出久根達郎さんが書いてたんだっけなあ、
どんな本を読んでいるかが知れることはその人の思想が知れることだ、
って。だから、コワいことなんだって。

ってことは、どんな本を読んだか、どんな本に興味を持ったか、
なんて話は、自分の思想面を吐露できるような相手じゃないと
しゃべりくり合うのはかなり危険、とも言えますね。