コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第47回 教えると芸が減る

新藤兼人監督の映画『さくら隊散る』を観た。
昭和20年8月6日、広島で被爆して死んだ役者たちの話だ。
役者たちはもともと東京で活動していた役者たちだ。
戦争が激しくなって思うような演劇活動ができなくなり、
演劇で国民を元気づけるという目的で
移動演劇隊「さくら隊」を結成し、
その日たまたま広島にいたのだった。

沢村貞子著『貝のうた』に
さくら隊の中心的役者だった丸山定夫の話が出てくる。
昭和のはじめ、丸山と沢村は同じ劇団に所属していた。

役作りに悩む新人の沢村は先輩の丸山に、
どうしたらいいか教えてほしいと頼む。
「教えると自分の芸が減るからいやだ」と丸山は答えた。
沢村はなんて冷たい人なんだと思った。
しかし、50年役者を続けたあとで考えたらそのことばの意味が
よくわかったと沢村貞子さんは書いている。

教えると芸が減る、私もその意味はなんとなくわかる。
教えることを仕事にするようになったらオシマイだ、
だれかが言ってた。
でも、だから、
教えないで教えるセンセーがいてもいいような気がするんだけど。