コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第51回 作曲家 林光

「僕は今日は休養の日だからね」
「……」
「さ、キミは机に向かいなさい」
「……」
「僕はこれから『秋津温泉』を観るから」
「……」
「『秋津温泉』、キミは何度も観てるでしょ」

『秋津温泉』は私の大好きな映画だ。
編集長日記になぜか書いていないが、
ポチはひとりで『秋津温泉』を観ていた。

「泰ちゃんの出てる場面、確認しといてね」

別になにか目的があって調べていたわけじゃないんだけど、
『正伝三文役者の死』(新藤兼人著)を読んだら、
殿山泰司が『秋津温泉』に出演したことが書いてあって、
『秋津温泉』は何度も観ているのに泰ちゃんが出ているシーンが
思い出せなくて気になっていたのだ。

「板前の役だったよ」
「新子の旅館の?」
「そう」
「音楽は林光だったよ」
「えっ、そうだったの」

作曲家の林光は『裸の島』ではじめて知った。
でも、はじめて知ったんじゃない。

いつぐらい前だったか、
林光さんが日経新聞の夕刊一面の連載コラムを書いていたことがあった。
具体的な内容は思い出せないんだけれどおもしろかった。

あの欄のコラムは「プロムナード」に比べると
私にはあんまり好みじゃなくて、たいてい読まなかったりするのだが、
林光さんのはなんだかおもしろくて毎週楽しみにしていた。
そういえば、映画音楽をわりとよく担当しているとかなんとか
書いてあったような気がする。

で、あのコラムで林光さんの名前をはじめて知って、
わりと覚えやすい名前なんで覚えていて、
この前『裸の島』を観たら出てきて、
新藤監督の対談がDVDに付録で入っていて、
ああこの人だったんだあと思った。
それ以降、音楽のクレジットを気にするようになったら、
私とポチ好みの映画の音楽をバンバン担当しているんで驚いた。
『秋津温泉』も音楽がいいのだ。
あれも林光さんだったとは。