コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第330回 美人は性格がいいのか

吉田恵輔監督映画が、
普遍的なオンナのイジワルさを
描いてるのがいい、って話の続き。

女子高生映画とも評される吉田恵輔監督の映画は、
性欲の対象としてオンナに視線を向けると同時に
オンナのイジワルさをも描いている。

ってことは、
オンナをオトコとは違うモノとして見ながら
オトコと同じ人間として見ている、
って気が私にはして、
なんだかちょっと気持ちいいのは
そのせいじゃないかと。

『なま夏』は、
蒼井そら演ずる杏子(あんこ)が主人公。
杏子は美人で、その友だちが不細工。

この友だちといっしょにいるときに杏子は、
三島ゆたか演ずる益男(ますお)に
ラブレターを同封したぬいぐるみをもらう。
益男と杏子は通勤通学の列車が同じ。

友だちのほうがきゃあきゃあはやしながら
ラブレターを読み上げたりする。
ぬいぐるみには盗聴器がしかけてあって、
その様子を益男は受信機から聞く。

たぶん、女子高生のやりとりを
盗聴して聞くって点が
この映画の新しい点なんだろうけど、
私にとってはそんなことよりも、
ラブレターをもらった当人が
きゃあきゃあいってないのに
不細工な友だちのほうがきゃあきゃあいってるとこに
妙に共感。

というのは、このシュチュエーション、
高校時代に体験したことがあるからだ。

もちろん私は不細工な友だち役のほうで、
私と美人な友だちは列車通学していて、
美人な友だちは、
列車でいっしょになる他校の男子から
しょっちゅうラブレターをもらっていた。

男子は、たいてい気持ち悪い感じの
サエナイ男子だった。
って、お前にいわれる筋合いはない、って
男子たちはいいたいだろうけど。

美人な友だちがもらったラブレターを
私が無理矢理読むことはしなかったと
記憶しているんだけれども、
大人になってるんで、
記憶を捏造している可能性もなくはない。

もしかしたら無理矢理奪って
読んでいたかもしれない。
いずれにしても、ラブレターについて
きゃあきゃあはやしたてた記憶は明確にあります。

不思議なのは、
いつもいっしょに通学していて、
そんな視線がどこから送られていたのか
まるで私は気がつかなかったのに(笑)、
ラブレターをもらった当人は、
なんとなくラブレターの主を特定していた
ということ。

私とおしゃべりに夢中になっていながら、
いや夢中になっているように
私には思い込ませながら、
男子の視線をきっちりキャッチしていた……
ラブレターをもらったことのない私には
どうやっても想像できないワザだ。

『なま夏』では、杏子が益男の視線を
あらかじめキャッチしていた様子はない。
でも、リアルワールドなら、
おそらく事前に特定できていると私は思う。

高校時代の、その美人の友だちとは
大学時代に疎遠になってしまったのだが、
彼女は美人なのに性格がよくて、
だから友だちになったんだわ、と私は
ずっと思い込んでいた。

そう、
日経新聞3月28日付け俵万智さんのコラム
「美人は性格がいい(と私は思う)」を読むまで。

俵さんは、
〈中学のときも、高校のときも、
一番の仲良しは学年で一番の美人だった。
別に美人をねらったわけではない。
気がつくと結果としてそうなのだ。
気が合うし性格のいい人が多い〉
と書いている。

ああ私も同じだわ、と思った。
私も、中学のときも高校のときも友だちは美人だった。
彼女たちは男子にモテた。
しかし、あのコラムを読んで
なんだか腑に落ちないものがあった。

コラムの中に、
いっつも引き立て役なんだから、と母親にいわれた
というような部分があるが、
おそらく俵さんは、
引き立て役になるつもりはないのに
結果としてなってたのよ、テヘヘ、
みたいなニュアンスで書いていたのだと思う。

そして、美人の友だちのほうだって、
不細工な私を引き立て役にするつもりで
友だちに選んだわけじゃない、という意味も
あるんだと思う。

が、『なま夏』を観て、
高校時代の体験を思い出して、
ほかの吉田恵輔監督作品を観て、
オンナが無意識にとる行動に秘められた
イジワルさの存在をクローズアップされて、
思った。

不細工なオンナの側からすれば、
なぜか美人と友だちになる、ってことになるが、
美人はやっぱり無意識に友だちを選んでいる、
のかもしれない。
無意識にイジワルなのだ。

美人というのはいろんな基準があって、
美人というのは数が少ないように思えて、実は数が多い。

自分のことを不美人だと書く俵さんだって、
あるところでは美人といわれているし、
特に小説家や漫画家になると
学生時代美人だといわれてなかった人が
いきなり美人になることが多い。

だから、美人が美人と友だちになる確立は
決して少ないわけではない。
しかし友だち関係を結べば、
必ずどっちかが美人でどっちかが不細工になる。
優劣ができるわけだ。

だから、不細工なほうがなぜか美人と
友だちになってしまうんだよねー、というよりも、
優位にたつほうが劣位にまわるほうを
無意識に選択していると考えたほうが
わかりやすいんじゃないだろうか。

俵さんのいうように、
確かに美人は性格がいい。
他人に、特に男性に、
悪意を向けられることが少ないから。

けれど、性格がいい美人でも、
無意識のイジワルさは持っている。
だとすれば、このイジワルさは
普遍的なもののような気がする。

そういうイジワルは、
オンナが生き抜くための特技かもしれないし、
不細工なオンナには別の特技があったりするから、
普遍的なオンナのイジワルさは興味深い。

 
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