コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第31回 想像力はあるか

「オリンピックに興味ないんですか?」。
最近、人に会うたびに言われます。
だれそれの試合をテレビで観た、と興奮して話しても、
私が「へえ」とか「ああ、観てないんで」って
興味なさそうに答えるからでしょうね。
興味ありげに「へえ」って言ってるつもりなんだけど。
もっと演技の勉強せんといかんでえ。

「はい、興味ないんです」って正直に答えたら、
昨日会ったAさんは、
「オリンピックに興味のない人もいるんですねえ、驚いた」
と言わはりますねん。
あんたはん、想像力が欠乏してはりますどすええ。
隣組(通じるか?)がある時代なら率先して
ワテのこといいつけるタイプどすがな。

「じゃあ、そのかわり、いったいなにをしているんですか?」
とAさんは聞いたんで、とうとうワテ、
「いいですねえ、幸せで」と答えましたでえ。

「オリンピックに興味ないんですか?」と聞く人々が、
オリンピックをテレビで観ているような時間っちゅうのんは、
たぶん暇な時間てことでしょうから、
私がそのかわりになにをしているかというと、
たぶん、本を読んでいるか、映画を観ています。

自分と違う人間がいるって想像、
私はわりと小さいころからできていたと思います。
自分と違う人間がいるという想像をできない人のほうが多いのだ、
ということも小学生のうちにわかっていました。

まあ、その第一の理由は、
ド田舎なのに小学校から越境入学していたせいでしょうね。
そりゃ、むちゃくちゃナマイキどすがな。
東京みたいに隣りの家は違う区、みたいな越境じゃないからね、田舎は。

250人くらいいるひと学年にたったひとりの越境生だったわけですが、
お前は何者?
転校生か?
ズルして田舎から出てきたのか?
幼稚園にはいなかったじゃねえか、
と正直者の子どもたちは言うわけです。
ばあか、単なる越境だよ。
東京から見ればお前んちもアタシんちも同じド田舎なんだよっ、あほっ。
越中屋なんて、東京じゃデパートって言わないんだよ、
アレは、スーパー。
7歳でとってもいい経験ができました。

私が帰省して、地元の人がちょっと話しかけると
たぶん私の反応が、
明らかに期待された反応じゃないせいだと思うんですが、
たいていその場にいあわせる母親が
「すみません、この子は、このへんのことは
あんまり知らないんですよお、すみません」
(以下、すみません、繰り返し)って、フォローしてくれる。
というか、なぜか先にあやまってくれるわけです。

これはもちろん、
越境させたことを自慢にしているわけではなくて、
すみません、すみません、ちょっとヘンな子なんで、
これ以上、フツーのことを聞いたり会話したりしないでください、
って意味のようです。
おかあはん、ありがとさん。

※方言参考資料および触発映画
『三文役者あなあきい伝』(殿山泰司著 ちくま文庫)
『三文役者』(近代映画協会 新藤兼人監督)