コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます
第99回 モノクロ映画とツイード
映画『黒い十人の女』(1961/市川崑監督)と
『砂の女』(1964/勅使河原宏監督)を観ました。
この2本は、アート系のクリエーターや学生に人気の
フィルム・ノワールってやつらしいんですが、
私がちょっと観てみようかなあと思った理由は
1961年、64年という製作公開年です。
私の生まれたころ(1963年生まれなの)の映画が
最近、気になるんですよね。
日本映画的にはすでに斜陽の時代だったせいもあり
今まであんまり観てない時代だってこともあるけど。
60年代はわりときちんとした洋装を
フツーの人が身につけていた最後の時期で、
自分のアルバムとかを見ても
母や叔母はわりとちゃんとした洋服を着てます。
子供の私も帽子をかぶってたりして。
ちゃんとしているといってもおおげさなもんではなくて
作れそうな簡単っぽい洋服なんだけど
ラインとかが基本に忠実なのも勉強になる。
その上、生地がちゃんとした綿やウールとかだから
60年代の手作り服の匂いを実際に体験しているかどうかは
実際に洋服を着たり作ったりする上で
わりと大きな違いがあるんじゃないかなあと思う。
『黒い十人の女』では、岸恵子の洋服がイカしてます。
女優役なんだけど、
現在の「女優の洋服」ってやつではぜんぜんなくて
(ブランド名がわかるとかのタイアップもんではないという意味)
洋服屋さんで作ったみたいなスーツやジャケットを着てます。
ま、実際に作ったもんでしょうけど。
モノクロなんでホントの色はわかんないけど
たぶん黒のセーターの上に
グレーのツイードのジャケットとスカートを着たのがよいです。
スカートはインバーティドプリーツで、前後ともにプリーツが入ってる。
ツイードが高級そうでふっくらしている。
厚みのありそうなボタンの感じもステキなの。
モノクロ映画でのツイードってわりと印象深いというか、
モノクロにも耐える素材なのか
モノクロのレトロ感とツイードという素材のレトロ感がマッチするのか、
モノクロ映画のツイードってわりと私は気になります。
モノクロ映画でのツイードで思い出すのは
ヒッチコック監督の『バルカン超特急』(1938)ですね。
消えちゃうスパイ役のおばあさんがツイードのコートを着てる。
彼女の服装を説明するシーンがあるんだけど
生地の素材や色の説明が詳しくて
(今、正確には思い出せない)
ソーイング好きの私なんかにはとても楽しいディテールなんですよ。
おばあさんの服なんで、かっこよくはないんだけど。