コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます
第1233回 赤と緑と黄色の壁がかわいい部屋
ツルシカズヒコ執筆
「伊藤野枝1895-1923」第60回昂然
(現在リンクを切ってます)に
ワタナベ・コウの絵が加わりました。
絵の舞台は
1913(大正2)年6月30日。
このころ、木村荘太(1889-1950)は、
スウェーデンの作家、ストリンドベリ
(当時は、ストリンドベリヒとも訳された)の
「痴人の懺悔」(「痴人の告白」とも)を
翻訳中でした。
ストリンドベリ(1849-1912)は、
スウェーデン出身の作家です。
ほぼ同時代の作家で、「近代演劇の父」とも
呼ばれるイプセン(1828-1906)とは対照的に、
女性蔑視的な作品を書いたことでも知られ、
「痴人の告白」はその代表作らしい。
内容については以下のブログ↓参照。
そうかと思えば、
子ども向け世界文学傑作集に
ワイルドの「幸福の王子」
(=「燕と王子」)とともに
収録されるような「ぴあの」という
泣ける童話も書いています↓
「幸福の王子」を書いたワイルドも、
美青年貴族との肛門性交で有罪判決
(法律で禁じるほどフツーだった肛門性交)
を受けた作家であります。
女性を自分たちと対等な「人間」として
愛さなくてはいけなくなった
「偽善」の時代に
「本音」で挑んだ男たちは、
「かわいい」童話を作れる人でもあった、
という点が興味深いですよね。
北原白秋とかサトーハチローとか
日本の童話童謡作家もしかり。
(和光大学でのワタナベ・コウ講演会を
企画した宮崎かすみ教授の名著↑)
*
さて、ストックホルムには、
ストリンドベリの博物館もあるようです
(行ったことないけど)↓
上記サイトでは、
ストリンドベリが住んでいた部屋を
360度閲覧可能。
ゲーテとシラーの小さな胸像と
ピアノの上には
ベートーベンのデスマスクも吊るされた、
赤と緑と黄色の壁がかわいい部屋です。
*
そして、
夜空に浮かぶ吹き出しの
「ナマでガリガリー
ヒヤッコイ コーボーミズー」は、
前回の絵にも登場させた氷売りの声です。
夜の物売りの声を入れたくて、
おでんやラーメンの屋台も
(明治後半に登場していたもよう)
考えたんですが、
夏なので違うかなと。
『明治物売図聚』を見たらば、
氷売りの項に、
明治38年頃の山形地方では
「昼は早朝より夜は十一時すぎまで、
勇ましき掛声にて売りまわる」と。
『明治物売図聚』(三谷一馬著/立風書房)
6月下旬の蒸し暑い時期、氷売りは、
麹町あたりを夜っぴって走りまわって
いたような気がします。
野枝が荘太の下宿を辞したのは
夜10時頃でした。
ちなみに、
6月下旬の氷売りと言えば、
泉鏡花の小説「紫陽花」を思い出す。
氷売りの少年が登場する、
ヒンヤリとして不気味な紫陽花の映像が
思い浮かぶ短編です。
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