第1254回　コール天と森鴎外

コウコラム：「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

2015-10-24（土）

昨日のコラムで触れた
コーデュロイことコール天ですが、
文化出版局刊『服飾辞典』によると、
CORDUROYコーデュロイ
（事典内の表記は「コージュロイ」）は、
〈緯（よこ）毛ビロード織りに織り、
表面にけば立った縦畝をあらわした織物のこと。

語源は、フランス語のコール・デュ・ロワ
（王様の畝／Wikipediaによると違う説も）
からと言われ、
アメリカでは1870年に
マサチューセッツ州で織り始められ、
日本では明治24年ごろに輸入されました。
当時は人力車の座席に使われていたんだって。

そのあと、
下駄の鼻緒に使われるようになって
需要が増加し、明治27年、
吉田亀寿という人物が東京浅草で
国産初のコーデュロイの製造に
成功したそうです。

「コーデュロイの商品開発について」によると、
日本製コーデュロイは現在も
静岡県の旧磐田郡福田町を中心とした地域で
そのほとんどが生産されているようですが、
理由は、明治時代の鼻緒問屋に
磐田郡福田町出身者が多く働いていたため。
福田町でのコーデュロイの生産は明治29年から。

コーデュロイのフランス語語源説は、
「コーデュロイは王様の服だった」に詳しい。

同記事によると、
江戸時代の終わりごろに
一般的な織物技術を広めた
寺田彦左衛門という人が
磐田郡福田町の出身だったのに関係して、
浅草の鼻緒問屋では同町出身者が多く
働いていたらしいですね。

また、日本でコーデュロイを
コール天と呼ぶ理由にも触れています。

コールが「畝」で、
天はビロードを漢字表記するときの
「天鵞絨」の天。

コーデュロイ、ビロード（ベルベット）、
別珍（ベルベッティーン）は、
見た目がよく似た生地です。

「天鵞絨」は、ビロードの漢字変換で
出て来ます。明治大正時代の小説で
「びろーど」とルビを降られて
登場することもありますが、
織物としてのビロードを指す場合と、
色の暗い青緑色を指すことがあり。

コーデュロイは、1960年代に流行った
アイビールックでもジャケットやスカート、
パンツの素材として使われています。

よく知られたものとしては、
ジョン・f・ケネディの
コーデュロイのジャケット
（米国マサチューセッツ州の
なんとかってブランドのものらしい）
でしょうか。

今でも、
いわゆる「団塊の世代」あたりの
アイビー信奉者のオヤジとかは、
コーデュロイのジャケットを
得意気に着てたりしますよねえ。

オヤジのコーデュロイと言えば、
映画『明日に向かって撃て！』の
ロバート・レッドフォートのジャケットも、
なかなか、印象深いけど。

そして、ちょっと面白いのが、
森鴎外の『織紝小記（しょくじんしょうき）』。

これは、
日本製コーデュロイの開発者である
吉田亀寿が著者の『織物組織編』
（大日本織物協会/1897明30）から
鴎外が抜粋して書き写したノートです
（webで全ページ閲覧可能）。

夏目漱石や森鴎外は小説の中に
織物の名前をよく登場させていますが、
織物についても勉強していたんですね。

ちなみに、
現在、ツルシカズヒコが執筆中
（絵＝ワタナベ・コウ）の
「伊藤野枝1895-1923」の主人公、
伊藤野枝が最後の編集長をつとめた
雑誌『青鞜』の名は、
Blue Stocking（ブルー・ストッキング）の
日本語訳です。

鴎外がストッキングに「鞜」の字を
当てていたことから、
生田長江が『青鞜』と名付けました。

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