詳伝・伊藤野枝

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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」30回 出奔(二)

文●ツルシカズヒコ 一九一二(明治四十五)年四月、出奔した野枝は福岡県三池郡二川村大字濃施(のせ)の叔母・坂口モトの家に一時逃れ、その後、友人の家に身を潜めていた。 「出奔」はその友人の家に身を潜めていたときの実体験を創作にしている。 「出...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」29回 出奔(一)

文●ツルシカズヒコ 野枝が出奔したのは、一九一二(明治四十五)年四月初旬だった。 野枝は後に「動揺」を発表するが、その中の木村荘太宛ての手紙に出奔についての言及がある。 「動揺」によれば、新橋から帰郷の汽車に乗った野枝は徐々に落ち着いてきて...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」28回 わがまま

文●ツルシカズヒコ 登志子や従姉の家は博多の停車場から三里余りもあった。 その途中でも野枝は身悶えしたいほど、不快なやり場のないおびえたような気持ちになった。 従姉の家に立ち寄った後、安子が従姉の家に泊まることになったので、登志子と男が一緒...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」27回 日蓮の首

文●ツルシカズヒコ 門司港駅から博多に向かって汽車が動きだした。 登志子は右側の窓のところに座って外の方を向いたまま固くなっていた。 頭はほとんど働きを止めてしまった。 安子は野枝が持ってきた雑誌を、解かりもしないくせに広げて退屈しのぎに読...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」26回 帰郷

文●ツルシカズヒコ 一九一二(明治四十五)年三月末、上野高女を卒業した野枝は東京・新橋駅から列車に乗り、福岡県・今宿に帰郷した。 この帰郷について野枝が書いた創作が「わがまま」である。 「わがまま」に登場する人物設定は、以下である。 登志子...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」25回 抱擁

文●ツルシカズヒコ 上野高女の卒業が間近になったころのことについて、野枝と同級の花沢かつゑはこう書いている。 ……三月の卒業も間近になった頃友達は皆卒業後の夢物語に胸をふくらませておりました。 或る人は外交官の夫人になりたいとか、七ツの海を...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」24回 おきんちゃん

文●ツルシカズヒコ 年が改まり、一九一二(明治四十五)年、学校は三学期になった。 野枝はほとんど何もやる気が出なかった。 苦悶は日ごと重くなり、卒業試験の準備などまるですることができなかった。 「辻先生と野枝さん」と誰からとなく言われるよう...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」23回 天地有情

文●ツルシカズヒコ 野枝が福岡から帰京したころ、一九一一(明治四十四)年八月下旬の蒸し暑い夜だった。 平塚らいてうは自分の部屋の雨戸を開け放ち、しばらく静坐したのち、机の前に座り原稿用紙に向かった。 らいてうはその原稿を夜明けまでかかり、ひ...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」22回 仮祝言

文●ツルシカズヒコ 西原和治著『新時代の女性』に収録されている「閉ぢたる心」(堀切利高編著『野枝さんをさがして』p62~66)によれば、野枝が煩悶し始めたのは、上野高女五年の一学期の試験が終わり、夏休みも近づいた一九一一(明治四十四)年七月...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」21回 縁談

文●ツルシカズヒコ 級長になり、新聞部の部長を務め、谷先生の自死を知り、新任英語教師の辻の教養に瞠目した野枝の上野高女五年の一学期はあわただしく過ぎていったことだろう。 井出文子『自由それは私自身 評伝・伊藤野枝』によれば、野枝と同級の花沢...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」20回 反面教師

文●ツルシカズヒコ 野枝が上野高女五年に進級した、一九一一(明治四十四)年の春。 野枝が谷先生からの手紙に返信したのは四月末だったが、一週間が過ぎ、十日が過ぎても谷先生からの返事は来なかった。 そして、とうとう五月の上旬のある朝、谷先生の友...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」19回 西洋乞食

文●ツルシカズヒコ 一九一一(明治四十四)年四月、新任の英語教師として上野高女に赴任した辻は、さっそく女生徒たちから「西洋乞食」というあだ名をつけられた。 辻がふちがヒラヒラしたくたびれた中折帽子をかぶり、黒木綿繻子(くろもめんしゅす)の奇...