詳伝・伊藤野枝

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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」48回 新妻莞

文●ツルシカズヒコ 奥村は藤沢の実家から転送されて来た、紅吉からの二通めの手紙を受け取った。 簡単な絶交状だったが、奥村はともかくらいてうに知らせておこうと思い、さっそく手紙を書いた。 手紙と《青鞜》ありがとう。 雑誌は待ち切れず、三崎郵便...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」47回 モンスター

文●ツルシカズヒコ 奥村は画家の視点で、らいてうをヴァン・ダイクが描いた『オランジュ公と許嫁』のプリンセス・マリイのようで、さらにボッティチェッリやラファエロが描くマドンナが「この人の内にある」と思った。 中世の貴族を思わす端正な顔、小柄な...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」46回 ロゼッチの女

文●ツルシカズヒコ 伊藤野枝「雑音」(『大杉栄全集別冊 伊藤野枝全集』/『定本 伊藤野枝全集 第一巻』)に、らいてうと奥村が一夜をともにした件について、紅吉が野枝に語って聞かせる場面がある。 「雑音(十六)」によれば、らいてうと奥村が一夜を...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」45回 雷鳴

文●ツルシカズヒコ 西村と奥村が南湖院を訪れてから二、三日すると、写生の帰りだといって画材を持った奥村が突然、らいてうの宿を訪ねて来た。 描き上がったばかりの「南郷」という松林のスケッチを見せてもらったらいてうは、ふと『青鞜』一周年記念号の...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」44回 運命序曲

文●ツルシカズヒコ『元始、女性は太陽であった 平塚らいてう自伝(下巻)』(p381)と奥村博史『めぐりあい 運命序曲』(p31~32)によれば、一九一二(大正元)年八月の半ばを過ぎた日のことである。 この日の午前中、奥村博は実家から一キロの...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」43回 南郷の朝

文●ツルシカズヒコ 青鞜社内からも非難され追いつめられた紅吉は、らいてうの短刀で自分の腕を傷つけた。 いったいどういう激情に動かされたものか、自分を責めようとする激動の発作からか、紅吉は自分の左腕に刃物をあてたのでした。 厚く巻いた繃帯をほ...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」42回 吉原登楼

文●ツルシカズヒコ 紅吉こと尾竹一枝は菊坂の女子美術学校を中退後、叔父・尾竹竹坡の家に寄寓していたが、一九一一(明治四十四)年十一月に実家のある大阪に帰郷していた。 紅吉がらいてうの存在を知るきっかけとなったのは、森田草平が『東京朝日新聞』...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」41回 同性愛

文●ツルシカズヒコ 野枝が円窓のあるらいてうの書斎を初めて訪れた日の夜、青鞜社員の西崎花世が友達ふたりを連れてやってきた。 ひとりは西崎が下宿している家の主婦で、もうひとりはやはり社員の小笠原貞だった。 『元始、女性は太陽であった(下)』(...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」40回 円窓

文●ツルシカズヒコ 「雑音」第一回は『青鞜』一九一二年十二月号の編集作業のシーンから始まっている。 野枝が本郷区駒込曙町一三番地のらいてうの自宅を訪れたのは、おそらく十一月も半ばを過ぎたころだろうか。 野枝が三畳ほどの円窓のあるらいてうの書...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」39回 青鞜

文●ツルシカズヒコ 一九一二(大正元)年九月十三日、明治天皇の大喪の礼が帝國陸軍練兵場(現在の神宮外苑)で行われた。 乃木希典と妻・静子が自刃したのは、その日の夜だった。 野枝がらいてうから送ってもらった旅費で帰京したのは、「伊藤野枝年譜」...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」38回 椎の山

文●ツルシカズヒコ  『元始、女性は太陽であった 平塚らいてう自伝(下巻)』(p404~405)によれば、野枝から手紙を受け取ったらいてうは、まず辻潤に相談することにした。  小耳に挟んでいた染井という住所を頼りに、らいてうは辻の家を探し当...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」37回 野生

文●ツルシカズヒコ 出奔した野枝に対する親族のフォローが気になるが、矢野寛治『伊藤野枝と代準介』(p74)によれば、代準介とキチが上京し野枝に翻意を促したが「ノエと辻はすでに深い関係となっており、しばらく間を置き、熱の冷めるのを待つことにし...