詳伝・伊藤野枝

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「詳伝・伊藤野枝」第169回 野依秀市(四)

文●ツルシカズヒコ野依『アナタの御亭主はアナタを可愛がりますか。』伊藤『ソンな事を聞くもんぢやありませんよ。』野依『言つたつて宜いぢやありませんか。』伊藤『正直な事を言はないから大丈夫です。』野依『ヂヤ、アナタは不正直な女なんですか。』伊藤...
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「詳伝・伊藤野枝」第168回 野依秀市(三)

文●ツルシカズヒコ野依『ヘエ、ヘエ、爾うでせう。   まるでおノロケだ。   さうさう、アナタは第三帝国の中村狐月君に恋して居るんですつてネ。』伊藤『冗談言つちやいけませんよ。』野依『ヘエーーだつてアナタはあの人が好きなんぢやありませんか。...
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「詳伝・伊藤野枝」第167回 野依秀市(二)

文●ツルシカズヒコ 野依社長は野枝サンが何を聞いても巧く言ひ逃げるので、 何やら話題を考へて居るらしく暫(しばら)く黙つて居たが、間もなく砲門を開いた。野依『アナタは凡(すべ)の男性に対してどう言ふお考へをおもちですか。』伊藤『妾は喋る事が...
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「詳伝・伊藤野枝」第166回 野依秀市(一)

第166回 野依秀市(一)文●ツルシカズヒコ 一九一五(大正四)年七月七日。 野枝は実業之世界社社長、野依秀市( のより・ひでいち)に会いに行った。 このときの野依と野枝の対話記事「野依社長と伊藤野枝女史との会見傍聴記」が、実業之世界社発行...
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「詳伝・伊藤野枝」第165回 フランス文学研究会

文●ツルシカズヒコ 大杉豊『日録・大杉栄伝』によれば、『平民新聞』を出せなくなった大杉と荒畑は、そのころサンジカリズム研究会を発展させた平民講演会を主宰していた。 平民講演会は労働者を引きつけ新入会者を受け入れ、運動を前進させる橋頭堡だった...
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「詳伝・伊藤野枝」第164回 三面記事

文●ツルシカズヒコ 『青鞜』七月号「編輯室より」から野枝の言葉を拾ってみる。 ●……それで前号にも申しましたやうに八月は一月やすみまして九月の紀念号からしつかりしたものを出したいと思ひます。それで九月号には堕胎避妊についてのお考へを成るべく...
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「詳伝・伊藤野枝」第163回 ロンブローゾ

文●ツルシカズヒコ 野枝が物書きとして順調にステップアップしていく一方で、辻の評判は芳しくなかった。 辻は、前年一九一四年の十二月、ロンブローゾ『天才論』の訳著を植竹書院から植竹文庫第二篇として出版した。 英訳本『Man of Genius...
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「詳伝・伊藤野枝」第162回 日常生活の日誌

文●ツルシカズヒコ 『新日本』一九一五年六月号(第五巻六号)に掲載された「日本婦人の観たる日本婦人の選挙運動」は、アンケートに回答するスタイルの記事で、野枝も回答を寄せている。 他の回答者は鳩山春子、矢嶋楫子(かじこ)、木村駒子、与謝野晶子...
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「詳伝・伊藤野枝」第161回『痴人の懺悔』

文●ツルシカズヒコ 『青鞜』六月号「寄贈書籍」で、野枝は木村荘太訳『痴人の懺悔』(ストリンドベルヒ著)と青柳有美『美と女と』を紹介している。 ストリンドベルヒの自伝の一部で氏の最初の結婚生活を書いたもので御座います。 この小説は是非誰にも一...
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「詳伝・伊藤野枝」第160回 堕胎論争

文●ツルシカズヒコ 『青鞜』一九一五(大正四)年六月号は発売禁止になった。 『青鞜』にとっては三度めの発禁である。 『定本伊藤野枝全集 第二巻』「私信–––野上彌生様へ」の解題によれば、原田皐月が書いた「獄中の女より男に」が「風俗壊乱」だと...
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「詳伝・伊藤野枝」第158回『美は乱調にあり』の間違い

文●ツルシカズヒコ 野枝にとってショッキングな事件が起きたのは、一九一五(大正四)年五月ごろだった。 辻はこう書いている。 ……僕らの結婚生活ははなはだ弛緩してゐた。 加ふるに僕はわがままで無能でとても一家の主人たるだけの資格のない人間にな...
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「詳伝・伊藤野枝」第157回 マックス・シュティルナー

文●ツルシカズヒコ 大杉は野枝からの手紙に返事を書かねばならぬという、義務感に責められていた。 しかし、どうしても書けない。 書くならば、野枝への沸騰した情熱をストレートに表明した文面にならざるを得ないが、それもできない。 大杉は野枝とふた...