コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第226回 1000円カット

1000円カットを体験してしまった。

なんとかIさん(美容師さんの名前)に
不義理せずにおこうと、
前髪だけ自分で切って、
あとは伸ばしっぱなしにしていて
こんなに髪が長くなってしまった。

髪が長いと、冬のこの時期、
洗うと寒いから洗わなくなる
(私だけ?)。
髪が抜けて、家中、
長い髪の毛がゴロゴロ落ちてる
(私だけ?)。

いや、
髪が抜けるのは加齢現象かもしれない。
頭頂部が透けてきてるよ、
と教えてくれる親切な男性が
うちに住んでいるので、
気にしているのだけれど、
これは、
長い髪の重さでひっぱっているせいではないか、
と考えてみたりもした。

だから切ろうって決心したんだけど、
Iさんとこへ行くとなると
カット代金が6000円かかる。
カットに1時間くらいかかる。
予約しても待ったりするので
2時間くらいは見ないといけない。
曜日や時間帯によってはそれ以上かかる。
で、できるだけすいてる日に行こうとか、
何も予定のない日に行こうとか、
できれば午前中にすませたいんだけど
あそこは11時開店なんだよなあとか、
あれこれ考えているとなかなか行けない。
いや、それはウソだな。

10分1000円という魅力的なものが
徒歩5分圏内に存在しているという現実が
私を誘惑するんだな。

頭頂部が透けてきたと教えてくれるオトコが
それを体験し、わりと満足し、
しかも頭にくるのは、
1000円カットに行ったという話を
美容師のIさんにくったくなく
しゃべったりしているという事実だ!

「男はいい」
と私はIさんに話したことがある。
「1000円カットでいいんだもん」。

そしたらIさんは
「女性でも行ってる人、いますよ」といった。
「1000円カットだと
パッツンて切られちゃいそうですよね?」

Iさんは
「毛先をすいてくれっていえばいいんですよ」
といった。

私はIさんを試していた、ような気がする。
まあよく考えれば
こちらが不義理と気にやむほど
あちらは気にしないだろう。
行けるようになったらまた行けばいいんだし。

それでも気の小さい私は
手芸部でリサーチしてみたりして
半年くらい悩んだ。

うちのオトコの話では、
サービスは売らないから、
美容室みたいにおしゃべりはしてくれないよ、
チケットを買ったり
手荷物はロッカーに預けないといけないんだけど、
そういう仕組みの説明をはじめて行っても
お店の人は説明してくれないよ、
とかなんとか、
ものすごくコワいところみたいにいうのだ。
そんな風にいわれると
ますます体験したくなるじゃないか。

私が住んでる笹塚には2軒ある。
どっちも同じチェーン店なんだが。
HPで見てみたら
開店直後と夕方は混むと書いてあった。
午前中にすませちゃいたいんだけど。

「だったら11時くらいに行けば?」
うちのオトコがいった。
開店は10時。
「開店直後が混む」って文章を
私はなんだか午前中いっぱい混む
ってふうに読んでました。

で、ついに決心して、
チケットを買うのね、
と心の準備をして行ったら
80歳代くらいの男性がお店の人に
チケットを買ってここに名前を書いて下さいと
説明を受けていた。
なんだ説明してくれるんじゃん!
と思いながら私もそのとおりにやった。

しかし、
うちのオトコがいってたロッカーが
見当たらない!
どこにあるんじゃ、ロッカー!
おじいさんは手ぶらだしー。
手荷物ロッカーに入れないと
怒られるんじゃ、ドキドキ。

で、観察してたら、おじいさん、
自分は84歳で、
もう髪はほとんどないんだけどさあ
ハッハッハッ、
なんて理容師(でいいのか?)さんと
ニコヤカにおしゃべりしてるよ。
ヨソの女にもてたいから来たんだ、
なんていってたし、おじいさん。

私の番になった。
理容師(でいいのか?)さんは
60歳代くらいの女性。
スレンダーな体にピタTと
スリムジーンズを身につけている。
うちのオトコは確か、
カットする人のファッションが
まずフツーの美容院と違うから、
っていってたような気がするんだが。

で、問題のロッカーは、
カットする席の鏡の裏に隠れていた!
理容師(でいいのか?)さんが開けてくれて
手荷物を入れるようにうながしてくれた。

そして、1000円カット初体験で
最も驚いた事件が勃発。

理容師(でいいのか?)の女性が
私が席につくと耳元で
(ドライヤーの音でうるさいから)、
「どうして今ごろ髪を切るんですか?」
とニコヤカに話かけてきたのだ。

驚いた。
絶対に話かけられないと思ってたから。
ってこともあるが、
「今ごろ」ってどういう意味なんだ?

フツーの美容院なら
どういう意味ですかって質問し返すところだが、
そんなことしておしゃべりが成立したら
10分が終わっちゃうじゃないか、
と心配になってなにもいえなかった。

一日経った今も
「今ごろ」の意味を考え中。

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 編集協力:ツルシカズヒコ

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『裁縫女子』(リトルモア)のインタビューなど】

雑誌『hito(ヒト)』3号

「サイゾーウーマン」

●歌人の枡野浩一さんとのユースト対談↓
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●写真家の大野純一さんとのユースト対談↓
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●文筆家の近代ナリコさんの『裁縫女子』(リトルモア)書評↓
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