コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第243回 本を見ただけじゃ作れません

本日の手芸部は、
IさんとSさんが初参加。
Sさんはトートバッグ、
IさんはラグランTシャツ
作りました。

Sさんは5年前に
ミシンを買ったそうなのだが、
ソーイングの本を見ても
まるで作れなかったという。
ソーイングの本の
初心者向きとか簡単は方便だからねえ。
作り方図をどんなに詳しく書いても
はじめてミシンを使う人には
なにがなにやらだからねえ。

本を見ただけじゃ作れない、
という真実を
本が伝えなきゃ、それは偽善だ。

というわけで、
2月発行予定の『裁縫女子宣言!』では、
本を見ただけじゃ作れない、
とも書いたけど、
さらに発想の転換で、
作り方図を極力省きました。

自分だけの服は誰にでも作れるよ、
と呼びかける本にとって、
それがどうして本でなきゃいけないのかを考えたら
大切なのは、
詳しい作り方図を掲載することじゃない
と気づいたからです。

詳しい作り方図は、
作れる人にとって有効なだけで、
作れない人にとっては
むしろ難しそうなんですよね。

私が呼びかけたいのは、
自分には服なんて作れないんじゃないか、
と思い込んでいる人たちです。
すでに作れている人たちではありません。

こんな簡単なことに気づいたのも、
『裁縫女子宣言!』の担当編集者が
ダーリンことツルシカズヒコで、
彼が裁縫やソーイング専門の編集者
ではないからできたことですね。

さて、Iさんは、昨年12月の
カタログハウスの教室に初参加して
コート作りにチャレンジした人ですが、
「あの日はなにがなんだかわからなかった」
という人なんです。

そう、あの日、
Iさんは母上とふたりで参加していた。

母上は81歳(ご本人が私に教えてくれた)、
洋裁は得意なようだった。

洋裁が得意な年配の人は、
たいてい私のやり方を受け入れられず
明らかにイライラした態度を見せる。

しかし、Iさんの母上はまるで違った。
自分にとって新しい服の作り方を
会得しようという気、満々。

山崎ミシンも足踏みミシンから
買い替えた(もったいない!)ばかりとかで、
ボタンホールの手順など
操作をきっちり覚えようと
メモまでしていた!

8時間を超える講習で
後半は若い人でも「疲れたのでもう帰ります」
というくらいなのに、最後まで
まるで疲れを見せず縫っていた。

Iさんによると
ものすごく楽しかったと
母がいっていました、という。

それに比べて、というか、
そういう母親の存在がそうさせるのか、
Iさんは下手くそだった……。

母と娘のデコボコぶりで、
私の記憶に残る参加者であった。
ああ、それなのに、それなのに
(三波春夫調で)、
そのIさんが、あのIさんが、
手芸部参加の申込みをしてきたときは
いやあ、驚きました。

しかも、
裁縫頭になりたいんです、
母に内緒で勉強します、
というじゃありませんか。
応援したいじゃないの、
お母さんを驚かせてあげましょう、
と返信しましたよ〜。

で、本日の初参加。
あの日の下手くそぶりが夢だったかのように、
Iさんは縫っておりました。

あの日、あんなにコワい、コワいといっていた
ロックミシンも、
「手前を踏んで」といってあげたら
わりとうまくかけてました。
まあ、そういう細かいコツを直接教えてあげられないのが、
大勢でやる教室のツライとこだよね。

ラグランTシャツは、かぶれるとこまで縫えたんだけど、
そのあたりで「着られるものができた」と
うれしそうな顔をしてくれたのも
センセー的には感激でした。

大丈夫、
もっと太っても、
これからガンガン
自分サイズの服が作れるから。

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(発行:日本文芸社
 企画:エム・エム・クリエーション
 編集協力:ツルシカズヒコ

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『裁縫女子』(リトルモア)のインタビューなど】

雑誌『hito(ヒト)』3号

「サイゾーウーマン」

●歌人の枡野浩一さんとのユースト対談↓
http://www.ustream.tv/recorded/12750111

●写真家の大野純一さんとのユースト対談↓
http://www.ustream.tv/channel/ohnojunichi

●文筆家の近代ナリコさんの『裁縫女子』(リトルモア)書評↓
http://bit.ly/fHvj35

●『裁縫女子』は↓で最初の4ページが読めます(無料)。
http://xfs.jp/yVaxt

●YouTube 「クレヤン放送局」は↓
http://www.youtube.com/user/watanabe3kou