コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第165回 ママをイジメないで!

『節電女子』(日本文芸社)執筆中の
最大の事件は、6月3日に、
おばあちゃんが102歳9ヶ月で
亡くなったことです。

おばあちゃんの葬式で、7年ぶりに
故郷の新井(現新潟県妙高市)に帰省して、
最も驚いたのは、
妹が太っていたこと!

妹は、クレヤン増刊6号
漫画「ワタナベ・コウの優雅な生活 vol.2」に
登場しているように、もともと太ってはいる。
それが、さらに、太ってたんだから、
もおタイヘン。

あれは、10キロ増程度じゃない。
20キロ増……いやいや、
全体量が大きいわけだから、
全体に対する割合で考えなければ。

体重50キロの人が10キロ増えたら
わりと太った感じに見える。
けど、
体重80キロの人が10キロ増えたら?
ちょっとポチャッとしたかな、
程度でしょう。
いや、わからない程度か。

てことは……あれは……
きゃあ〜、口に出来ません。
 
 
 
火葬場からいったん自宅へ戻って
みんなで休憩しているときだったろうか。

私が熱いお茶を入れ、
母だったか、
手伝いの近所のおばさんだったか、
誰かが冷たい飲み物を持って来た。
妹は……
年配者用に用意してあった椅子の一脚に、
座っていた。

妹の娘ふたりは中学1年生、
コミック本をむさぼり読んでいた。
私も借りて読んだ。

「あ、やっぱり、漫画、好きなんだあ」
「うちのママも大好きだよ」

双子の姪がニヤニヤする。
子どものころ、妹は、
三原順のファンだった。
私は、三原順が苦手だった。

 
 
妹のダンナさんが立ち上がった瞬間、
妹の口から
その言葉は発せられた。

「氷、持って来て」

絶妙なタイミングだった。
ハイエナが素早く獲物を
とらえたみたいな……。
ずっと、このタイミングを……
座って、待っていたとは。

氷のある台所までは大人の足で、
10歩、いや、7歩だ。
タイミングを見計らって
ジイッと待つ間に
何度氷をとりに行けるだろうか。

私は妹がかわいい。
今、何とかしなければ。
妹の娘ふたりに向かって言った。

「こんなデブなおかあさん、イヤでしょ」

双子の姪は、
ヘアスタイルを気にしたり、
私のピアスや靴に関心を示したり、
私服もわりとおしゃれだし、
あごのとがった女の子が登場する漫画を読んでるし、
中学生のフツーの女の子らしく、
ファッションや外見を気にしているっぽい。

だから、私は言ったのだ。
賛同を得られると思ったのだ。
みんなで手をとりあって
この危機的状況を脱するべきだと思ったのだ。

「こんなデブなおかあさん、イヤでしょ」

双子の姪の反応は……
予期せぬものだった。

「ママをイジメないで!」
プイッ〜。

私は一瞬、何が起きたのか
よくわからなかった。

私は、中学生のころ、
母が太っているのがイヤだった。
友達のやせてきれいなおかあさんを見ると
うらやましかった。
母にも言った。

「もう少し、やせてよ」

デブな母を
本気でキライなわけじゃなかったけれど、
美を愛でる中学生の女の子の感覚としては
正しかったような気がしていた。
姪にああ言われるまでは……。

「ママをイジメないで!」

 
 

●ワタナベ・コウの漫画単行本第2弾
『節電女子』は7月27日発売!

(発行:日本文芸社/企画:エム・エム・クリエーション
 編集協力:ツルシカズヒコ

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【ワタナベ・コウ漫画デビュー作『裁縫女子』(リトルモア)の
 インタビュー、対談、書評】

雑誌『hito(ヒト)』3号

「サイゾーウーマン」

●歌人の枡野浩一さんとのユースト対談↓
http://www.ustream.tv/recorded/12750111

●写真家の大野純一さんとのユースト対談↓
http://www.ustream.tv/channel/ohnojunichi

●文筆家の近代ナリコさんの『裁縫女子』(リトルモア)書評↓
http://bit.ly/fHvj35

●『裁縫女子』は↓で最初の4ページが読めます(無料)。
http://xfs.jp/yVaxt

●YouTube 「クレヤン放送局」は↓
http://www.youtube.com/user/watanabe3kou