ポチのクレヤン編集長日記:ポチことツルシカズヒコが書く身辺雑記
手紙作家・伊藤野枝の最高傑作と後藤新平の懐の深さ
伊藤野枝の絶筆は、
大杉栄の妹に宛てた手紙だった。
野枝の生涯は手紙に始まり手紙で終わった
という見方もできそうだ。
野枝は物書きとしては
「手紙作家」だったのではないか。
上京を懇願して叔父と叔母に宛てた手紙。
叔父の代準介は、
この手紙を隣家に住む
小説家・村上浪六に見せた。
浪六がその文面と力強い筆跡を
高く評価したおかげで、
野枝は上野高等女学校に
進学する道を切り拓いた。
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上野高女卒業後、
同校の英語教師だった辻潤に宛てた手紙。
野枝は辻と手紙を交わすことにより、
辻と恋愛関係になり、
辻との同棲を通じて
彼の持つ才能を吸収することができた。
平塚らいてうへのアプローチも手紙だった。
らいてうにインパクトを与えた文面が、
野枝を『青鞜』の看板娘に押し上げた。
『青鞜』時代に木村荘太と交わした
赤裸々な手紙は『青鞜』誌上に掲載され、
野枝が物書きとして評価される
きっかけになった。
足尾鉱毒事件に関する見解を述べた
大杉栄に宛てた手紙は、
大杉のハートをわしづかみにして、
大杉との恋愛&同志的結合に到った。
大杉が警視庁に
不当な検束をされた際には、
内務大臣・後藤新平への抗議の手紙も書いた。
「あなたは一国の為政者でも私よりは弱い」
これが手紙作家・伊藤野枝
の最高傑作であろう。
この手紙は現存し、
奥州市立後藤新平記念館に所蔵されている。
後藤新平も懐が深い。
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