コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第154回 続メモしておきたいこと

メモしておきたいこと、もうひとつ思い出した。

「10万も20万もするミシンなんて、おかしい」。

某国出身の彼女を仮にMさんとする。
私はMさんが話す言語のうち
ふたつの言語を多少聞き取り話すことができる。
いや、できた。
今後Mさんのことはわりに話題にするかもしれないし、
そのとき、私の無知による失言とかで
国際問題や宗教問題や戦争に発展しても何なので
(なわけはないんだけど)、
とりあえず国名はふせる。

ちなみに、
その国を旅行したことのある日本人は少ないらしい。
私はその国を旅行したことがあって、
首都じゃないMさんの出身都市にも滞在したことがあって、
Mさんが「教科書でしか知らない」という
その国の世界史的都市にも滞在したことがある。
以上、自慢。

ちなみに、BRICsに属す国ではない。
文字は違うんだけど発音が同じという言葉が
世界には存在するですよ。

と、横道にそれましたが、
Mさんはこれからミシンを買おうと思っている。
「10万も20万もするミシンなんて、おかしい」は、
ミシンについて相談されたときのセリフだ。

コウ手芸部初参加者の大半は
ミシンをこれから買おうと思う人なんだけれど、
日本人のみなさんは、裁縫の得意な友人
あるいはネットの中の見知らぬソーイング達人が
こう助言してくれたと必ず言う。
「ミシンは、高ければ高いほどいい」。

高ければ高いほどいい。
この考え方は日本人特有のものなのか。
特有が適切でないなら、
日本人にマッチした考え方なのか。

私の中学時代の友人で地元で美容師になった子がいた。
彼女は当時東京にしかなかった高級ブランド品の店で
(なんとかって型が東京にしかなかったんだったかな)
バッグを買った。
店へは私もつきあった。

そのとき、
私は別に何とも言わなかったはずだが
(コウさんは目が笑ってないとよく言われるが)、
あるとき、私のノーブランドのバッグを見ながら
「そういうのはどうやって買うの?
どうやったらそれがいいって自分で決められるようになるの?
私だって高級ブランドがいいと思ってるわけじゃない」
と彼女が言った。

こんなこともよくある。

カタログハウスでやってるほうのソーイング教室で、
ときどきスタッフが
「何でもコウさんに質問してくださーい」
なんて声をかけることがある。
そういうとき最も多い質問は
「どこで生地を買うんですか?」。

教室では、私の過去の作品が展示されていたり、
私が自分で作った服を着ていたりする。
どれもとても手作りには見えない、
その生地はいったいどこで買ったのか、
というのである。
(生地さえあれば私だってそんなの作れるって意味か?)

服は、きれいに縫えていればかっこいいわけではない。
どんな生地で作るかが最大の重要ポイント。
かっこいいというか似合う、かな。
たぶん、
私が自分で作った洋服やノーブランドのバッグは、
私によく似合っていてかっこよく見えるのだろう
(1m90円の生地やノーブランドが似合う女だよ)。

高級ブランドの服やバッグというのは、
わりとどんな人にも「似合う」。
しかし、決定打に欠ける。
だから無難だとも言える。

私が高級ブランドのバッグを買わないのは、
「みんな」が持ってるからヤだ、というよりも、
形や色やデザイン自体をかっこいいと思わないのだ。
どんなモノも、高ければ高いほどいい、と考える人は、
自分の基準がないんだろうか。

どんな色や形がかっこいいか。
絶対の回答はない。
自分がかっこいいと感じるモノがかっこいいのだ、
と信じるしかない。
高ければ高いほどいいという選び方は、
自分の基準がない場合に
仕方なく目安にする方法なのかもしれない。
買えるんだったら、
それはそれでいいんじゃないかと私は思う。

あ、こんな話も思い出してしまった。

生地加工業を営む会社を取材させてもらったことがある。
かつては浴衣用の生地を加工していて、
出来ればそちらを続けたいのだが、
需要が減っているので仕方なく
洋服用生地の加工をしているということだった。
特に、やりたくないのに儲かるのは〜の生地。
へえなるほどなあと思った。
いや、それは置いておいて。

オーガニックという生地があるでしょ。
生地というのは、
問屋から送られてきた素の生地に
色をつけたりしわをつけたり伸ばしたり、
へえそんな加工までというような
実にさまざまな加工をしてから洋服になるわけです。
わかりやすいところでは、
白い生地なんかは白く漂白しているわけですよね。

で、オーガニック生地というのはどんな大変な加工をするのか。
「オーガニック生地というのは
何も加工しないのが加工なんですよ」
と社長さんはニッコリした。
あ、もう言いたいこと、わかった?
裁縫する人たちにはわかったよね。

オーガニックの生地ってほかの生地より高い。
1m90円の生地買ってる私にすりゃあ、
なんじゃこりゃあっていうくらい高い。
加工するのに手間がかかるわけじゃないのに。
何もしないのに。
なんで高いのーーーーっ。

オーガニックのシール貼れば高くても買う人がいるからかなあ。
高ければ高いほうがいいものだと思う人が
もしかして多いせいかなあ。

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●「サイゾーウーマン」による
『裁縫女子』刊行記念インタビューは↓
http://www.cyzowoman.com/2011/04/post_3452.html

●文筆家の近代ナリコさんの『裁縫女子』(リトルモア)書評↓
http://bit.ly/fHvj35

●コミックエッセイ『裁縫女子』(リトルモア)は
↓で最初の4ページが読めます(無料)。
http://xfs.jp/yVaxt

●YouTube 「クレヤン放送局」は↓
http://www.youtube.com/user/watanabe3kou

●歌人の枡野浩一さんとの
『裁縫女子』についてのユースト対談は↓
http://www.ustream.tv/recorded/12750111

●写真家の大野純一さんとの
『裁縫女子』についてのユースト対談は↓
http://www.ustream.tv/channel/ohnojunichi