詳伝・伊藤野枝

詳伝・伊藤野枝

「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」96回 あの手紙

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年七月二日の午前中に行われた、野枝と辻と木村荘太の面談。 荘太がリアルタイムで書いた「牽引」の記述に沿って、その経過を追ってみたい。 この日また下宿に来てくれと野枝に手紙を書いたのは、荘太だった。 午前...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」95回 二通の手紙

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年七月二日の午前中、野枝と辻と木村荘太は三人で面談をした。 まずは「動揺」の記述に沿って、その経過を追ってみたい。 その朝、野枝は腫れぼったい目を押さえて目覚めた。 午前十時ごろ、野枝と辻は家を出た。 ...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」94回 筆談

文●ツルシカズヒコ 辻が白紙に鉛筆で細かく書いたものには、こう記してあった。私は今非常に苦しんでゐる。 もう落ちついて仕事なんぞしてゐられなくなる。 私は実際昨晩位おまへに対して深い憎悪を抱いた事は恐らくあるまい。 私は幾度も自分の心に湧き...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」93回 絵葉書

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年七月一日。 野枝は前夜の疲れと頭痛のために昼ごろまで寝ていた。 昼ごろ起きて机の前に座り、辻が帰るまでに自分の気持ちを書いておこうとしたが、なかなか書けなかったので、今宿の父のところに手紙を書いた。 ...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」92回 眼鏡

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年六月三十日の夜十時ごろ、麹町区平河町の荘太の下宿を出た野枝は、半蔵門から市電に乗った。 早く帰って辻に話したいと思い、電車の走るのももどかしかった。 北豊島郡上駒込の家に帰ると、辻だけ起きていて何か書...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」91回 第二の会見

文●ツルシカズヒコ 野枝は荘太の話に耳を傾けながら、自分が書いた最後の手紙について考えていた。 野枝は辻との関係を破綻させることなく、荘太ともう一度会いたいと願ったのだが、荘太は自分の思いよりずっと強い意味に解釈したのだろう。 野枝は態度が...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」90回 牽引

文●ツルシカズヒコ 「牽引」(p27~28)によれば、辻の家を出た荘太は巣鴨橋まで馳けた。 電車の中で荘太は辻の苦痛を想像したが、自分と野枝の牽引と結合は自然だから仕方がないと思うほかなかった。 神保町から青山行きに乗り、半蔵門で降りると、...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」89回 自我主義

文●ツルシカズヒコ 木村荘太「牽引」によれば、一九一三年(大正二年)六月三十日の夕方、辻の家を訪れた荘太に「私が辻です」と辻が名乗ったが、荘太はそれが野枝と共棲している男だとすぐには気づかなかった。 荘太が尋ねた。「伊藤さんおいでですか?」...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」88回 キテクダサイ

文●ツルシカズヒコ 木村荘太「牽引」によれば、六月三十日、荘太はこの日の朝早く目が覚めてしまった。 荘太は野枝を空しく待ち続けた。 時計が昼の十二時を打った。 いてもたってもいられなくなった荘太は、野枝が男に引き止められているさまや、急に過...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」86回 アルトルイズム

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年六月二十八日の朝、辻はその日の夕方に開かれる南盟倶楽部の音楽会に来るようにと、切符を置いて出かけた。 野枝は落ちつかない気持ちで部屋の掃除をしたり、そこらの書物を引っ張り出したりしていると、思いがけな...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」85回 木村様

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年六月二十七日の朝、野枝が目覚めて一番最初に頭に浮かんだのは、そろそろ来るだろう荘太からの手紙だった。 締めつけられるような苦しい気持ちで、床の中から出た。 辻が出かけて二十分とたたないうちに、その手紙...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」84回 ドスト

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年六月二十六日、その日の朝、野枝は疲れていたのでかなり遅く目を覚ました。 野枝はこの日もまた校正かと思うとウンザリした。 しかし、今朝は手紙が来ていないのでのびのびとしたような気持ちになり、辻に昨日、岩...