週刊ポチコラム:ポチことツルシカズヒコが雑誌批評などを書きます

シンポジウム─浅間山荘から四十年 当事者が語る連合赤軍 その2

前回のこのコラムに関して、
ライターの朝山実さんからメールをいただきました。

朝山さんは今年2月に発行された
アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年』(角川書店)の著者。
同書には前澤虎義、加藤倫教、植垣康博、雪野建作の
インタビューが掲載されている。

朝山さんは「シンポジウム─浅間山荘から四十年 
当事者が語る連合赤軍」の会場にも来ていて、
そうした立場から
このコラムを読み、メールをいただいわけです。

朝山さんのメールには、まず、
前回のこのコラムの誤りの指摘がありました。

〈「死に意味はない」は、金さんではなく、
青砥さんの発言でした。
青砥さんにとっては、
ひっかかり続けていることばのようで、
まあ、そうでしょうね。
以前お会いしたときも、
同様のことは話されていました。〉

ご指摘、ありがとうございます。
お詫びして訂正させていただきます。

この指摘以外にも
朝山さんのメールは興味深かったので、
以下、引用させていただきます。

〈雪野さんが発言されたり書かれていた中で、
内ゲバと連赤の対照がありましたが、
シンポジウムでのいろんなひとたちの発言を聞いていて、
とくに田原さんが話されていた、
連赤は公に議論の対象となり、
映画などにもなりえても、
後の内ゲバはもっとヒサンで犠牲者も多大なのに、
こんな場はえられそうにもない。
違いは何かと。

内ゲバは、休止はしてもいまだ終結したわけではないのと、
反日武装戦線は「市民」を敵としたのが、
「市民権」をえられない理由だろうかと。
オウムもある意味同様なのかも。

加藤さんが言っていた、
村に危害を加えないかぎり村のひとは、
たとえ世間からみて悪人であれ、
村の人間を守るものだという。
と、ちょっと符合するのかと。
連赤はある意味、プロレスの場外乱闘に発展しても、
観客に危害は及ぼさないお約束があったけれど、
内ゲバには「誤爆」されかねないところもあったし。〉

以上、朝山さんのメールからの引用ですが、
〈加藤さん〉は朝山さんの著書の中で発言している
加藤倫教(元革命左派)さんのことです。

連赤とその後の内ゲバ、反日武装戦線、そしてオウムの違い。
それは「市民」を敵にしたかどうか。
確かにこの違いは大きいですね。

ただ、オウムはすでに終わっていると考えてよいはずで、
事件から30年ぐらい経過したら、
森達也の『A』のようなドキュメンタリーではない形の
映画とかになる可能性はないのだろうか。
「市民」を敵にしてしまったオウムの方が
病いの根が深いとすれば、
だからこそ忘れてはならないのではないだろうか。

森達也はシンポジュウムで連赤とオウムとの関連で、
こんな主旨の発言をしていたと思う。

〈連赤はこんな事件だったと総括などできない。
それは事件を矮小化するだけ。
オウムも一緒。
連赤とオウムは本質は違うがアウトラインは似ている。
組織犯罪には共通するものがある。
ナチス、戦前の日本……。
組織犯罪はトップひとりに責任があるのではなく
相互作用が働くものである〉

相互作用というのは組織のトップとその側近の相互作用、
あるいはその幹部と下部の組織構成員との相互作用。
それが組織犯罪に繋がるということであろう。

その際、キーワードになるのが
〈不謹慎〉と〈同調圧力〉だと森達也は指摘していた。

〈不謹慎〉という言葉は
日本特有の言葉で外国語に翻訳できないらしい。
何が〈不謹慎〉で何が〈不謹慎〉でないのか。
その基準が曖昧である。
だから〈不謹慎〉だぞと言われると黙るしかなく、
それが〈同調圧力〉をもたらす。
特殊な集団であろうと一般社会であろうと
〈同調圧力〉が支配している、
それが日本という国である。

こんな論理の流れだったと思う。

以下、朝山さんのメールの引用を続けます。

〈あと、面白かったのは、
三上さんや塩見さんの間に、鈴木さんが加わると、
話がわかりよくなることでした。

鈴木さんのように
「なにをいっているのか、わからない」といえるかどうか。
ツルシさんが「代案」でふれておられるように、
理解の遅れている人間は
黙ってついてきたらいいんだというのは、
現実社会ではよくある大人の態度で、
それ自体は異様なことでもありませんが、
革命を行おうとしたひとたちの内部にも、
あきらかなヒエラルキーがあり、
わかっていないものは無言を強いられる。
いや、むしろその圧力は会社なんかよりも強かったというのは、
たんなる個人の勇気があるなしじゃ片付けられない問題かとも。〉

新左翼用語(たぶん)が頻出する
塩見孝也と三上治の話は実際、わかりにくかった。
というより、わからなくて当然だと思った。
おそらく当時の新左翼の活動家の内輪で交わされていた会話は、
こんな感じだったんだろう。
新左翼体験ゼロの私には興味深かったのだけれど。

朝山さんの上記メールの後半は、
森達也の言う〈同調圧力〉に繋がる話ですね。

いずれにしても、言ってることがよくわからない人とか、
そういう人がトップにいる組織というのは、
それゆえに人を引きつける強烈な魅力があるのかもしれない。
だけどその多くはインチキなんだ。
僕はそう思います。

※以下、続きます。後日掲載。
なお、シンポジュウム出席者の方は敬称略にさせていただきました。