詳伝・伊藤野枝

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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」102回 出産

文●ツルシカズヒコ 野枝は辻の力を借りて、エマ・ゴールドマン『Anarchism and Other Essays』に収録されている「婦人解放の悲劇」を『青鞜』九月号に訳載した。 解放は女子をして最も真なる意味に於て人たらしめなければならな...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」101回 エンマ

文●ツルシカズヒコ 大杉と荒畑寒村が編集発行していた『近代思想』八月号に、「夢の娘ーーエンマ・ゴールドマン」が掲載された。 「夢の娘ーーエンマ・ゴールドマン」は、エマ・ゴールドマン『Anarchism and Other Essays』に収...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」100回 アンテウス

文●ツルシカズヒコ 野上夫妻の故郷は大分県臼杵(うすき)だったが、野枝の故郷が大分県の隣県である福岡県だったことは、弥生子と野枝に一層の親しみを抱かせた。「ぢやあなたは泳げるでせう。」 「えゝ、あなたは?」 「私も、だけど私は泳ぎは極下手の...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」99回 ジプシイの娘

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年から一九一四(大正三)年にかけて、野枝は隣家に住む野上弥生子と親密な交わりをしていた。 弥生子は『青鞜』の寄稿者であったが、野上邸は野枝が住んでいた借家と生け垣ひとつ隔てた隣り合わせにあった。 辻と野...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」98回 生の拡充

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年七月初旬。 奥山が赤城山から下山してまもなく、「緊急親展」と朱字で書かれた新妻莞からの手紙が、らいてうが滞在している赤城山の宿に届いた。 らいてうの東京の自宅から転送されて来た手紙だった。 啓 私はあ...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」97回 赤城山

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年六月末、らいてうは奥村博と新緑の赤城山に出かけた。『青鞜』七月号の文祥堂での校正にらいちょうが不在だったのは、この赤城行のためである。 新緑の赤城の風景のすばらしさについては、らいてうは長沼智恵子から...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」96回 あの手紙

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年七月二日の午前中に行われた、野枝と辻と木村荘太の面談。 荘太がリアルタイムで書いた「牽引」の記述に沿って、その経過を追ってみたい。 この日また下宿に来てくれと野枝に手紙を書いたのは、荘太だった。 午前...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」95回 二通の手紙

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年七月二日の午前中、野枝と辻と木村荘太は三人で面談をした。 まずは「動揺」の記述に沿って、その経過を追ってみたい。 その朝、野枝は腫れぼったい目を押さえて目覚めた。 午前十時ごろ、野枝と辻は家を出た。 ...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」94回 筆談

文●ツルシカズヒコ 辻が白紙に鉛筆で細かく書いたものには、こう記してあった。私は今非常に苦しんでゐる。 もう落ちついて仕事なんぞしてゐられなくなる。 私は実際昨晩位おまへに対して深い憎悪を抱いた事は恐らくあるまい。 私は幾度も自分の心に湧き...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」93回 絵葉書

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年七月一日。 野枝は前夜の疲れと頭痛のために昼ごろまで寝ていた。 昼ごろ起きて机の前に座り、辻が帰るまでに自分の気持ちを書いておこうとしたが、なかなか書けなかったので、今宿の父のところに手紙を書いた。 ...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」92回 眼鏡

文●ツルシカズヒコ 一九一三(大正二)年六月三十日の夜十時ごろ、麹町区平河町の荘太の下宿を出た野枝は、半蔵門から市電に乗った。 早く帰って辻に話したいと思い、電車の走るのももどかしかった。 北豊島郡上駒込の家に帰ると、辻だけ起きていて何か書...
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「あきらめない生き方 詳伝・伊藤野枝」91回 第二の会見

文●ツルシカズヒコ 野枝は荘太の話に耳を傾けながら、自分が書いた最後の手紙について考えていた。 野枝は辻との関係を破綻させることなく、荘太ともう一度会いたいと願ったのだが、荘太は自分の思いよりずっと強い意味に解釈したのだろう。 野枝は態度が...