コウコラム:「服を買わない生活」の中で考えたアレコレを書きます

第1286回 スライバーニットと殺人ザルと伊藤野枝歴史的瞬間


婦人画報のおかいもの

本日配信の
「ヨーロッパ服地のひでき」さんのメルマガで、
スライバーニットなる生地を知りました。

〈この冬も大流行のスライバーニット〉は、
〈「ダウンより軽い」と称される、
エアリーな風合い・軽くて暖かな着心地〉
なんだって。

「ひでき」さんちの
スライバーニットは↓
スライバーニットを開発した
イタリアMAPEL(マペル)社のもの。

ポリエステル35%モヘヤ25%
ウール20%アクリル20%
という素材配分からしても、
この価格は↓
服を買わない生活約15年の私には
妥当だと思えます。

(↑できるだけシンプルなラインの
コートやポンチョを作るのがおすすめ)

さて、スライバーニットのコート、
既成服でちょっくら検索してみましたが、
素材がいろいろでピンからキリまであります。

低価格帯の
スライバーニットのコートは、
ポリエステル100%がほとんど。
混ざっていてもアクリル。

安いわけですねえ。

つうか、これって、すでに、
スライバーニットではなく、
フリースでは??
と思われるものも中には。

スライバーニットが流行、ってことで、
フリースもスライバーニットも似てるし、
スライバーニットって呼んだほうが売れるよね、
的戦略なんでしょうか。

キュロットをガウチョとかスカーチョと
言い換えるようなもんだな。

と、あれこれ見ていたら、
オンワード・ドーリーガール・バイ・アナスイの
ポンチョコートは↓
毛80%ポリエステル20%だし、
イタリアMAPEL(マペル)社の表記もあるし、
かわいい!

上記「ひでき」さんちの
スライバーニット生地の価格を
妥当と見る私にとって、
デザインが洗練されているなら(←ココ重要)
スライバーニットで作られたコートの価格は、
同型が複数製造される既成服としては
5万円台は妥当だ(むしろ安い)と考えます。

手芸部で洋服作りを体験すると多くの人が、
「こんなに手間がかかるのに
どうして洋服はあんなに安いのか!」
と言います。

このまともな感覚を
普段の生活の中で持つことができないのは、
現代社会が「ゆがんだ社会」であることの
証明だわ……
と長らく考えていました。

しかし!

『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?
―― ヒトの進化からみた経済学』

によると、
視野狭窄(しやきょうさく)は、
人類の本能のひとつであり、
動物として生き延びるために
有効な能力なんだそうな。

なるほどー、そっちだったか。

まあ、確かに、
チンパンジーの中でも
最も凶暴な種が人類の祖先らしいので、
放っておいたら殺し合いし続けるわけで、
服がどうやって作られているか、
素材が何であるかなんかどうでもよく
流行を追い続け、
永遠に服を買わされる生活のほうが
「幸せ」なんだとも言えるでしょうな。

けど、そうなんだとして、
それで1万年も「進化」して
生き延びて来た結果が、
これかい!と思わなくもない。

繊維業界って
どうなってんだか知らないけど、
元祖が特許みたいなものを
申請できない仕組みなのか、
本物じゃないものにも
どんどん名前が使われるのね。

生地の名前がわかりにくい、
というのも、
繊維業界の秘密のルールと
関係あるんでしょうか。

まあ、ともかく、
軽くてあったかいという利点も、
毛玉ができやすいという欠点も、
まるでフリースなんで、
スライバーニットと称しているものの中には
実はヤッスいフリースだってのがある
ような気がしないでもない。

ちなみに、フリースは、
もともとウール100%のもので、
●ニクロの
ポリエステル・フリース出現以前には、
生地屋にもちゃんと売ってて、
アタシはわりと好きだったんですが、
あのフリース・ショック以降、
ウール製のを見かけることはなくなり、
また、生地なんかに興味ない人々は、
フリースをもとからポリエステル製だとして覚え、
そうして、フリースという単語は、
ポリエステル・フリースを指す語に
なってしまったわけですな。

ポリエステル・フリースの話をすると
必ず、あれはエコないいものでは?
と言う人がいますが、
某アウトドアメーカーの高級フリースは、
確かにエコないいもので、
だから高価なのかもしれませんが、
エコロジーとか自然とかいう言葉だって、
スライバーニット同様、
服を売るための「煽り文句」に
容易に変質します。

文章や言葉なんてものは、人間と同じで、
簡単にウソをつくものだってことですね。

という意味で、
先月描いた「第62回鉛筆」の絵、
野枝ちゃんが手紙を書いているうちに
つい「創作」してしまい、
しかもそれが「快感」なことに気づく場面、
あれは歴史的瞬間だと私は思う。

前近代だった日本人女性が、
近代に触れて「書く」ことを覚えてみたら、
それは人類という動物が
平気で「ウソ」をつく種であることを
自分自身を以って知ることでもあった、
という点において。

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