週刊ポチコラム:ポチことツルシカズヒコが雑誌批評などを書きます

vol.26 「夕刻のコペルニクス」誕生秘話

鈴木邦男さんのコラム「鈴木邦男の愛国問答」(第53回)で、拙著『「週刊SPA!」黄金伝説』に言及してもらった。

僕が『週刊SPA!』の編集長時、『週刊SPA!』に「夕刻のコペルニクス」という連載を鈴木さんに依頼したのだが(連載がスタートしたのは1994年10月)、そのきっかけになったのが『脱右翼宣言』(アイピーシー発行)という鈴木さんの著作だった。『「週刊SPA!」黄金伝説』の中にそのことを書いたのだが、「鈴木邦男の愛国問答」(第53回)でもそのことに触れている。

で、『脱右翼宣言』を読んでみた。同書の発行は93年12月23日。僕は『週刊SPA!』編集長時(93年〜95年)、日記をつけていた。その日記(94年)には、こんな記述がある。

1月16日(日)
電車で神保町へ。三省堂で右翼関係の資料を購入。近所の床屋へ。店主は早大文学部卒(僕より10歳ぐらい年長)。学生時代は革マルの闘士。早稲田の話で盛り上がる。

1月23日(日)
『脱右翼宣言』(鈴木邦男)読了。

つまり、93年12月に発行された『脱右翼宣言』を、僕は94年の1月に読んだわけである。1月16日に床屋の店主と早稲田の話で盛り上がったのは、僕も早稲田0Bだからというのもあったが、実は僕がその日購入したばかりの『脱右翼宣言』を持っていて、店主に「へぇ〜、おもしろそうな本読んでるね」と声をかけられたからである。鈴木さんは昭和18年生まれで僕より12歳年上である。鈴木さんと床屋の店主とは早稲田の学生時代に、右翼と左翼の関係で敵対していたわけだ。そんな流れで僕と店主の話も盛り上がったのである。

さて、『脱右翼宣言』である。16年ぶりに読み返してみた。どんなことが書いてあったのか、具体的な内容はすっかり忘れていたが、鈴木さんの思想的なスタンスがすごくわかりやすく書かれている。鈴木邦男の入門書といってよいと思う。93年10月に自決した野村秋介さんについて書いた1章以外は、編集者が鈴木さんに質問して、それに鈴木さんが答えるという語り下ろしのスタイルである。隠れた名著だと思う。

本日、8月2日は鈴木邦男さんの誕生日である。鈴木さんは獅子座である。僕は鈴木さんよりひと回り下の未年で誕生日は8月5日だ。げーっ、鈴木さんも僕も未年生まれの獅子座なのだった。

僕が鈴木さんに連載を依頼する直接的なきっかけになったのは『脱右翼宣言』を読み、鈴木さんという書き手に興味を持ったからなのだが、元はと言えば、『週刊SPA!』に掲載した野村秋介さんの自決記事に関してトラブルが生じ、それを機に野村さんの本を読み、鈴木さんの本にたどりついたからだ。しかし、もしかしたら未年生まれの獅子座という「因縁」が「夕刻のコペルニクス」を生んだのかもしれない。